所長 「うん、管理監督者をめぐっては、役職に就いていても相応の権限や待遇がなされていない『名ばかり管理職』が『日本マクドナルド事件』(H20.01.28東京地裁 )を始め、判例も数多くあるね。
新米 「マクドナルドの事件は、話題にもなりましたね。あれは、店長さんの事件でしたね」
深田GL 「そうだね、店長就任以来、店舗の責任者として、アルバイトの採用や、従業員の勤務シフトの決定を含め、会社のマニュアルに基づき店舗を運営していた。勤務実態は、早朝には店舗に出勤し、店舗の運営にあたり、退勤が深夜に及ぶことも珍しくなく、時間外労働が長い月で137時間あった」
大塚 「月137時間ですか。45時間をはるかに超えていますね」
E子 「店長は、アシスタントマネージャーや店長に昇格していくレベルの社員を採用する権限はない。人事考課の一部に関与することもあり、労務管理の一端を担っていることは否定できないものの、労務管理に関し、経営者と一体的立場にあったとはいい難い。店舗の運営については、会社のマニュアルに従うことが余儀なくされる。店舗で独自のメニューを開発したり、原材料の仕入先を自由に選定したり、商品の価格を設定するということはない。店長会議は、企業全体の営業方針、営業戦略、人事等に関する意見交換が行われる内容で、企業全体としての経営方針等の決定に店長が関与するものではない」
所長 「労働基準監督署は、多少甘いところもあるが、裁判所では、あくまで経営全体への関与が必要としているね」
E子 「店長は、形式的には労働時間に裁量があるとされているが、店舗の営業時間帯には必ずシフトマネージャーを置かなければならないという勤務態勢上の必要性から、店長がシフトマネージャーとして勤務するとなると、長時間の時間外労働を避けることもできず、労働時間に関する自由裁量があったとは認められない。そう判断されていますね」
大塚 「でも、今までは、『管理監督者と認められなくなるので労働時間管理を行っていない』という会社もありましたけど、『労働時間の裁量を与えること』と『労働時間の管理を行うこと』は全く別の話ですよね。実際に勤務した時間数を管理することが管理監督者性を否定することになりませんよね」
E子 「管理監督者は労働基準法による労働時間の上限規制は受けなくても、長時間労働による健康障害や過労死が生じた場合には、会社はその責任を問われるんですものね」
所長 「そうだよ。上限規制はなくても、健康障害防止義務まで免除されるわけではない。要注意だ。あ、ついでいうと、これは、ハラスメント問題も一緒だよ。ハラスメントに認定されなくとも、安全配慮義務はある。万一自殺なんかに発展すると大きな問題だよね」
新米 「え?自殺!?」
所長 「それは極端だけどね。でも実例もあるんだよ。それから、賃金等の待遇も問題になるね。裁判所では、従業員全体のトップから数%。具体的には、年収が700~800万円以上としている。監督署では、事実上トップから20%の基準が残っているけど、徐々に厳格化の傾向にはある」
新米 「賃金については、そんなルールがあるんですね」
所長 「あ、これは目安だがね」
今週の新米からボスへ一言
管理監督者については、労働基準監督署と裁判での判断には、大きな差があるんですね。裁判所は、正社員の採用に実質的に関与が必要といい、監督署は、部門の統括的な立場でも許す傾向にある。ただし、最低限、非正規社員の採用の権限は必要。
勤務態様も、裁判所は、タイムカードの打刻は管理監督者性否定の要素といい、監督署は、長時間労働是正のための労働時間把握は許容。
結構差がありますねー。安全配慮義務、健康障害防止義務は注意すべきだと思いました。
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