ズル賢い中国。コロナ禍で見捨てられた国を支援で取り込む姑息さ

 

中国の情報工作と支援の作戦が特に功を奏しているのがアフリカ各国です。元々、Before Coronaから、一帯一路の政策によりアフリカ各国の中国への傾倒が懸念されていましたが、アフリカ各国でCOVID-19の感染拡大が手に負えない状態になっている今、中国への警戒心が国民の中にも根強い中でも、先進国からの支援が届かない最貧国にとっては、中国からのアプローチが唯一の選択肢となり、結果、中国の思惑に刈り取られて、中国の勢力圏に組み込まれて行っています。

アフリカ大陸といえば、かつてより【欧州の裏庭】的な位置付けで欧州各国(旧宗主国)の影響が非常に根強いことで知られますし、日本もTICADを通じてアフリカへの進出を進めようとしているわけですが、新型コロナウイルス感染拡大が一段落したときに、改めてアフリカを眺めた時、変わり果てた感情と風景に驚くことになるでしょう。

先進国内では中国への警戒心が意図的に高められる半面、途上国では中国への警戒心が巧みに削られて好感度アップが進む動きが加速することで、国際協調が必要な時に、世界は、アメリカ組と中国組に分けられて、逆向きのベクトルへと導かれ、結果、世界の分断が進むことになります。さて、日本はどちら組に属すのでしょうか(ちなみにこの情報工作、今回は中国を例にとっていますが、どの国も当然行っていますのでご注意を)。今後の日本の地政学上のポジションを見る際に、非常に重要な質問です。

二つ目のWorld War on Communications(WWC)は、私たちの思考を巧みに操る【情報汚染】という世界戦争です。恐らくこちらのほうが私たちにとって身近な恐怖・戦いかもしれません。

これは何か? 一言でいうと【デマ(有害情報)の拡散によるマインドコントロール】です。

ニュースにも嘲笑的に取り上げられましたが、トランプ大統領が「消毒液を注射すればいいのではないか」といったことがその一例です。すぐさまアメリカの医療界が大批判をして事態の収束を図りましたが(そしてトランプ大統領もすぐに言い訳で打ち消しにかかりましたが)、このデマを信じて本当に消毒液を注射するような人が出てきたら大変なことになったでしょう。

しかし、よく似たことがイランやアフリカ諸国では悲劇を生みました。「エチルアルコールを飲むとコロナウイルスが死滅するらしい」とのデマが拡散されたことで、乳幼児を含む多くの人たちが実際に飲んでしまい、コロナウイルスによる死者数よりも一時多くの死者を出してしまったそうです。

他には「10秒間息を止めることが出来たらコロナには感染していない証拠だ」というデマもあったそうですが、これについては皆さん、とんでもない内容であることはお分かりになりますよね?

しかし、欧州やラテンアメリカ諸国では結構若者の間で流布されて拡散されたデマのようで、一時期、外出禁止規制の下、その規制を破る若者が多発した一因のようだと、今、欧州各国の政府機関が検証しているとのことでした。

そして極めつけは「5Gの電波が細胞内の免疫機能を破壊し、コロナウイルスへの感染を早めてしまう」というデマです。一時期はBBCでも報道されるなど深刻な事態だったと言えますが(そして日本でも数週間前に少し話題になったのを覚えてらっしゃいますか?)、科学的な根拠が何も示されておらず、また各国政府も警告メッセージを慌てて出したにもかかわらず、英国などでは5G基地局への放火が相次いだそうです。そしてさらには、「5Gといえば、ファーウェイだ。あ、5Gは中国が持ち込んだ罠だ!!」という途方もない被害妄想が拡大してしまった国もあったそうです。

このように書き出してみると、これらの内容がいかに信憑性の低いものか分かるかと思いますが、人々の不安に乗じてSNSなどを通じてばら撒かれたデマは、人の口づてに広がり、一人一人が周囲にばら撒くことで「情報による人心のコントロール」を意味する【情報工作】が成功することになり、人々を誰かが望む方向に誘導することになります。

もちろん、日本政府も含め、各国政府もこのようなデマや情報工作の企みに対して常時目を光らせているのですが、あまりにもデマが迅速かつ大量に拡散されるため、情報の氾濫状態が起こり、ファクトチェックが行き届いていないのが現状です。

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