(10)結局は政治の弱さに起因。
ということは、結局は政治の弱さに起因するということです。政治はあくまで政治であり、「本当に正しいこと」を要求するのは無理かもしれません。ですが、今回の「検査数が伸びない騒動」というのは、このまま行けば、加藤大臣の政治的な信頼度は官僚組織の代弁をするたびに食いつぶされていきます。また、安倍総理もそれをかばうことで、どんどん政治的な資産は減っていきます。
こういうことをやっていては、例えばですが、コロナの沈静化だけでなく、その後にやってくる経済の深いリセッション、そして世界経済の大きな変化にはとても対応できるとは思えないのです。
だからと言って、医学もビジネスも分かる超優秀な知識人に総理や大臣になってもらうというのは、現在の日本では不可能です。安倍総理や、閣僚などの人々が、必要な努力をして、つまり「専門外のことでも、責任をもって判断したり答弁をする場合には、全てを理解するまで徹底的にブリーフィングを受け、資料を精査する」という地道な努力をして、全てを頭に入れて、自分の言葉で話すことができる、つまり政治家として最低限のことをやらないから、こういうことになるのです。浅薄な追及のための追及に走っている野党議員も同罪です。
大臣は組織防衛、総理はその大臣の防衛、それでは世論にメッセージは届かないので、発信は専門家の中でタフな肝の座った尾身茂博士や、西浦博博士に丸投げ、これも問題です。彼らにはいわば天然のコミュ力で、科学に本音をまぶして情報を小出しにするテクニックがあるわけですが、そこに甘えているからこういうことになるのです。
とにかく、現在の状況は政治と官僚組織の「弱点」が複雑な化学変化を起こして、結果的に「仕事の進め方が変えられない」という実に「仕事のできない」自縛というか、スキル不足を露呈しているのだと思います。(1)から(10)に分解してお話しましたが、要はその全体構造に問題があるわけです。ですから、ここで、しっかり全部を明らかにして、しかも各部分がけんか腰ではなく、丁寧に利害と事実をすり合わせて「具体的に仕事が進む方向へ」調整していただきたいと思うのです。
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