トランプが米をダメにした。渋沢栄一の子孫が危惧する大国の衰退

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アメリカ中西部ミネソタ州から始まった抗議デモの動きが収まりません。新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない中、人種差別問題まで巻き起こっているアメリカは今、混迷を極めています。そんなアメリカで長年生活し、世界の金融の舞台で活躍する渋澤健さんがこの現状を考察。「シブサワ・レター」をご紹介していきます。

プロフィール:渋澤 健(しぶさわ・けん)
国際関係の財団法人から米国でMBAを得て金融業界へ転身。外資系金融機関で日本国債や為替オプションのディーリング、株式デリバティブのセールズ業務に携わり、米大手ヘッジファンドの日本代表を務める。2001年に独立。2007年にコモンズ(株)を設立し、2008年にコモンズ投信会長に着任。日本の資本主義の父・渋沢栄一5代目子孫。

トランプ大統領就任から始まった衰退

謹啓 ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。

「家族を連れてくるんじゃなかったかもしれない」50年以上、
米国に暮らしている父が最近になって心を痛めています。

終戦時に16歳の青年だった父は「いつか、この大きなアメリカ人と対等に仕事をしたい」という夢を抱き、39歳のときに念願の米国の土を踏み、それ以来、ほぼ帰国することなく、母と共に米国で暮らしています。妹たちもアメリカ人に嫁ぎ、5人家族の中で帰国して日本で生活をしているのは私だけですが、「健が正しかったのかもしれない」という弱音を吐く父は初めてです。ちょっと驚きました。

そろそろ91歳という年齢のためかと思いきや、毎日腕立て伏せをしていると自慢をしています。父の嘆きはトランプの大統領就任から始まりましたが、それは本人の品格が疑われる立ち居振る舞いの事だけではなく、同氏のような人物を大統領に当選させた米国社会の衰退に失望しているようにも感じます。

世界で最も豊かな先進国である米国の新型コロナウイルス感染による死亡者数は6月5日現在で11万人を超え、世界全体の三割弱です。コロナ禍の影響で米国社会の貧富の格差が顕著に表れ、足元では燻っていた人種差別問題が一気に火を噴きました。

外出自粛で家にこもっている父はTVで流れてくるニュースを見るのが嫌になり、最近ではYouTubeで京都の風景などを眺めているようです。夢が叶った青年の心を持っていた父が憧れていたアメリカの姿が失われつつあるように思います。

shutterstock_404241190image by: shutterstock

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