トランプが米をダメにした。渋沢栄一の子孫が危惧する大国の衰退

 

日本人が誇るべき一人ひとりの自律的行動

かつてのアメリカであれば、世界が危機に瀕したときには、必ず全世界に希望ある連帯のメッセージを発していました。今回は、それが全くありません。「アメリカ・ファースト」で内向きになり、「アメリカ・ユナイテッド」ではなく、分裂しています。今秋にトランプ大統領が落選したとしても、アメリカ社会が失われた時代から抜け出すことは当面なさそうです。

西欧諸国も新型コロナウイルス感染による荒廃から立ち直るには時間がかかりそうです。英国の百万人当たりの死亡者数は588名(6月5日現在)であり、スペイン(同580名)やイタリア(同557名)よりも上回ります。西欧の優等生はドイツ(同104名)であり、さすが堅実な国民性を表しているのかもしれません。ただ、それでも、コロナ禍の対策が遅れていたと言われる日本(同7名)のおよそ15倍の死亡者数です。

同じ先進国で、人権を尊重する民主主義の国家運営も同様であるはずなのに、この圧倒的な違いは何なのでしょうか。

専門家の総括を待たなければなりませんが、日本社会で新型コロナウイルス感染に対して一番効力があったのは、検査やワクチン、治療薬などではなく、一人ひとりの自律的行動の影響が大きかったのではないでしょうか。「自粛」の本来の意味は、自分から進んで行いや態度を改めることです。決してネガティブな言葉ではありません。

一人ひとりの適切な行動が、多数の人のためにもなり、感染被害を抑制することができたのではないでしょうか。一方、自粛精神が乏しく、他の人がやってくれればよいという身勝手な行動が多ければ、コロナ禍による傷跡は遥かに大きく深いものになったことでしょう。

不要不急。もし、新型コロナウイルス感染による緊急事態宣言下の暮らしで私たち日本人にひとつだけ学びがあったとしたら、それは何が「不要」で、何が「不急」であるのかがわかったことであると期待しています。

「不要」「不急」がわかるということは、逆に、何が「必要」で何が「緊急」であるかというのがわかったことでもあります。「必要」「緊急」の判断ができるからこそ、見えない脅威にも立ち向かえます。

MEからWEへ。これは現代における渋沢栄一の精神だと思っています。決してMEの否定ではありません。MEという存在があるからこそ、MEの行動があるからこそ、WEへ恩恵が広まるのです。

そして、WEの存在があるからこそ、MEの豊かな暮らしがある。MEとWEは相互に必要な存在である。そして、その関係を維持することは「緊急」である。そんなことを、私たち日本人は、この数か月で学んだと思います。この学びを、日本が世界へ広める。コロナ禍を経て、そのような時代が訪れたのではないでしょうか

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