美人アナリストが解説。ソフトバンクが通信会社とは呼べない実態

 

これがどのぐらい増えたのか減ったのかということに重点を置くべきだと孫社長は述べているのです。ソフトバンクグループは、モバイル企業から投資会社へと変貌を遂げた企業です。そのため、実態としての経営成績は「営業利益」ではなく「株主価値」として見たほうが妥当だという判断になります。

なぜでしょうか。モバイル企業が営業利益を指標にすべき理由は、モバイル通信料や端末販売などの実績としてカウントできるものが営業利益だからです。

対して、投資会社は、投資先の保有株式の評価から借入を差し引いた含み益・含み損での評価をするべきというのが理由で、株主価値を見たほうが企業の経営成績を正確に判断できるというわけです。

孫社長が「営業利益ではなく株主価値を見てほしい!」と言った意味が少し理解できたのではないでしょうか。

ソフトバンクを知るキーワード②「群戦略」

もう一つ、ソフトバンクを知るためのキーワードとして、“群戦略”という企業戦略を紹介します。群戦略とは、「それぞれの技術分野で進化のNO.1を走る企業に、(できれば)筆頭株主として20~30%の株式を持ち、ソフトバンクと共に大きく成長していくという組織体のあり方」のことを指します。

わかりやすく言えば、将来大きくなるベンチャー企業の株式を先に買って、成長とともにソフトバンクも一緒に儲かる仕組みをつくる戦略のことです。早めに家族になっておくファミリー戦略と理解すればわかりやすいかもしれません。

ポイントはこれらの企業の株式を100%持たないこと。あくまで、筆頭株主として20~30%の株式を持つことで、支配・管理するのではなく、極めて柔軟なグループ経営を維持しているのです。ここが三菱や三井、住友などの財閥グループとの違いです。この群戦略を理解すると、ソフトバンクグループが今後より投資会社として力を入れていくことが理解できると思います。

通信プラットフォーマーを目指しLINEを経営統合

ソフトバンクグループは、通信プラットフォーマーを制することを目指しています。そのため必要なものは何でしょうか。それは、あらゆるコミュニケーションや生活の入口である「決済」を押さえること。その努力はソフトバンクの決済事業の歴史を見ても明らかです。

【ソフトバンクの直近の決済史】

2018年6月 PayPay設立。ソフトバンクとヤフー(現Zホールディングス)それぞれ50%の出資で設立。
2019年5月 ソフトバンクグループがPayPayへ追加出資。ソフトバンクグループが50%となりPayPayの筆頭株主となる。
2019年4月 ヤフーは持株会社「Zホールディングス」を設立しその下にヤフーを置くと発表
2019年5月 ソフトバンクがヤフーを連結子会社化
2019年11月 ヤフーとLINEが経営統合しZホールディングスの傘下に入ると発表

たった2年だけでも激動なことがわかります。そんな「決済を制する者が通信プラットフォーマーを制する」という孫社長の考えは中国でアリババとテンセントの決済覇権戦争を見て確信したものです。

中国市場の「ペイ」市場を見てみると、2015年ごろまでは、スマホ決済市場においてはアリババの「アリペイ」が先行していました。一方、中国のテンセントの決済アプリであるウィーチャットペイが登場したのは、アリペイから9年後のこと。

しかし、後発であったにもかかわらず、ウィーチャットペイはアリペイと肩を並べるまでに成長しました。この猛追の背景には、ウィーチャットペイが1日に何度も触るコミュニケーションアプリに連動していることが挙げられます。

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