デモに揺れる米社会に今なお暗い影を落とす「南北戦争」の深い闇

 

アーリントン国立墓地も和解と統合の象徴ともいうべき位置づけにあります。南北戦争の戦没者のために戦争終結の前年1864年に建設されたワシントン近郊のアーリントン国立墓地は、陸軍省が管轄し、米国に尽くした人物が信仰の自由を保障する精神のもと、あらゆる宗教(または無宗教)によって埋葬されています。びっくりさせられるのは、仏教、神道、金光教、創価学会…と、日本人にも身近な宗教による埋葬の例もあるということです。

そして、このアーリントン国立墓地は南軍の英雄として知られるロバート・E・リー将軍の邸宅の周囲の土地に建設されているのです。

歴史的な名将として知られるリー将軍は、もともと奴隷制は道徳的な悪という立場でしたが、郷里バージニア州を愛する気持ちから南軍に身を投じ、軍司令官として北軍を苦しめることになります。

この米国各地にあるリー将軍を顕彰する銅像を撤去する動きは、かなり以前からくすぶり続けてきた問題です。米軍基地の名前から南軍関連を削除しようという動きも、リー将軍の撤去も、そして、それに反対する動きも、単に米国民の統合というだけでなく、いまなお南部を否定する北部、北部への抵抗の姿勢を失うまいとする南部という、外国人にはうかがい知れない複雑な要素が絡み合っていることがよくわかります。

くすぶっていた南北対立や人種差別の火種に油を注ぐかのような言動をしてきたトランプ氏が、秋の大統領選挙で再選されるかどうか、コロナの蔓延と相まって、かなり微妙な様相を呈してきました。(小川和久)

image by: Shutterstock.com

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地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。一流ビジネスマンとして世界を相手に勝とうとすれば、メルマガが扱っている分野は外せない。

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