賭けに出た習近平。コロナ対応の失敗を“香港併合”で揉み消す中国の魂胆

 

次に、中国と同じくCOVID-19による混乱の隙をうまく突いたのがエルドアン大統領のトルコです。最近報じられるのは、リビアにおけるシラージュ暫定政府とLNA(リビア国民軍─もともとはカダフィー派)との間で行われている内戦で鮮明化するトルコとロシアの代理戦争です。

トルコ(とカタール)はシラージュ暫定政府を後押しし、ロシア(とエジプト、UAE)はLNAをサポートしていますが、決して直接的な交戦はしないというのが特徴です。LNAのハフタル将軍は先日エジプトのシシ大統領と共に和平プランを提示しましたが、シラージュ暫定政府側は完全に拒否し、内戦が拡大する一方です。

和平への機運が吹き飛んだのが、最近クローズアップされるエジプトとリビアとの国境近くにある油田の街シルトをどちら側が握るかという戦いです。LNA側もシラージュ暫定政府側もこのシルトの獲得こそが支配確立の象徴として捉えているようで、国境地帯にトルコの支配の影がちらつくのを嫌うエジプトのシシ大統領は、『シルトの確保はエジプトにとってはレッドライン』として『シラージュ暫定政府軍討伐のためにエジプト軍の派兵辞さず!』との姿勢をここ数日鮮明化しています。

事態のエスカレーションを防ぐために先日トルコとロシアの外相が協議する予定でしたが、直前になってエジプトからの抗議を受け、事態収拾のチャンスが吹っ飛んでおり、とてつもない圧力が満ちていて、爆発寸前かもしれません(国連も長年調停の任に当たっていますが、残念ながら有効な策は講じられておらず、その存在意義は失われる一方です)。

この緊張の高まりが悪い方向に影響を与え始めたのが、混乱極まる北アフリカ情勢です。ここではモロッコ、アルジェリア、チュニジアを指しますが、これらはリビアを隣国・近隣国として持ち、リビアの向こうにはエジプトがいますので、これまではエジプトの勢力圏とみなされていましたが、ここにくさびを打ち込んだのもトルコです。

リビアでのトルコとエジプトの対峙は、今、近隣国にも広がっています。それにより地中海南岸を巡る覇権争いが過熱し、それは地中海地域での緊張をさらに高めています。それこそが以前よりトルコとEU、キプロス、イスラエルを交えた天然ガス資源を巡る領有問題です。

これは以前にもお話ししたように、天然ガス田がある“東”地中海域を、キプロスを国家として承認しないトルコは公海と最初は主張し、今ではトルコの領海であるとの主張に変えて領有権闘争をEUに対して仕掛けました。そこにEUと協議の上、天然ガス採掘ビジネスの権利を“得た”イスラエルが絡んできてトルコと対峙し、地中海に緊張が高まっています。

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