賭けに出た習近平。コロナ対応の失敗を“香港併合”で揉み消す中国の魂胆

 

本来ならばここで管轄権を主張し、軍を派遣してでもキプロスを守りに行くはずのEUが、COVID-19への対策と、同じく地中海に面するイタリアやギリシャなどの“南”の加盟国を救済するためにトルコからの挑戦に対抗できずにいるという実情があります。

イスラエルについては、採掘権を盾にトルコと対峙しますが、ここで最大のライバルであるイランの友好国であるトルコ(とはいえ、シリア問題ではちょっともめていますが)を刺激することで、中東地域全域におけるイスラエルとイランのとてもデリケートな軍事的なバランスと対峙に影響を与えたくないとの思惑も働き、イスラエル政府曰く「今回の案件はあくまでもpurely businessな議論に徹し、イスラエルとしては地中海を巡る論争には与しない」との決定に至っているようです。

リビア、シリア、イラン、サウジアラビア、北アフリカ諸国、そして地中海における権益の拡大と、多方面に網を張り巡らし、その影響力の再拡大を狙うトルコ・エルドアン大統領も、自国も重篤にCOVID-19の災禍に苛まれながらも、しっかりと混乱を活かしてトルコの存在意義を拡大しようとしていると言えるでしょう。

トルコの試みが失敗した暁には、恐らく中東地域の崩壊ドミノが加速し、北アフリカ・中東地域は非常に悲惨な戦争に突入することになります。それが先に来るか、それとも新型コロナウイルス感染拡大の第2波による災禍が先かは分かりませんが。

中印の武力衝突を除いては、まだ実際の戦争は始まっていませんが、自らの影響力の拡大や復権を狙う国々、特に中国とトルコにとっては、自国も深く傷つき大きな犠牲を払いながらも、新型コロナウイルス感染拡大で生まれた混乱と安全保障網のほつれを巧みにつき、その願いを叶えるための大きな賭けに打って出ています。

結果、混乱が広がり各地域での情勢の不安定化が進んでいますが、彼らの企みがうまく行くか否かは、「今後、どれだけ迅速に各国がCOVID-19ショックから立ち直れるか」という点と、「どれだけ迅速かつ強固に協調体制を築き上げられるか」という点にかかっていると考えます。不安定で先が見えず、いろいろな思惑が絡み合うアフターコロナの世界。皆さんはどう生きますか?

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