日本経済は本当に底を打ったのか?新聞各紙から透けて見えた現状

 

需要を喚起する??

【読売】は1面左肩と3面の解説記事「スキャナー」と社説。見出しから。
(1面)
景況感11年ぶり低水準
日銀短観 コロナ直撃 急落
(3面)
リーマン級 冷え込み
景況感 車の大幅悪化
「第2波」警戒 回復の足かせ
需要喚起へ予算執行を急げ(社説)

●ttiiの眼

1面は本記。「自動車」や「鉄鋼」の落ち込みの酷さが指摘され、非製造業でも「巣ごもり需要」が取り込めた「小売り」の9ポイント改善を除けば、総崩れの状況にあることが強調されている。

3面でも、「自動車」の落ち込みの深刻さと、同産業が基幹産業として国内景気の支え手であることから、その影響の大きいことが強調されている。

また新型コロナウイルス感染拡大との関係で、「景気の行方は世界の感染状況に左右されるため、リーマン・ショック後のような回復軌道をたどるかどうかは予断を許さない」としている。この辺りは《朝日》の認識と同じ。

《読売》らしさは社説に現れている。タイトルは「需要喚起へ予算執行を急げ」。ただし、中を読むと「需要喚起一本槍」というわけではなく、「政府は、企業の資金繰りを支えて失業の増加を防ぐとともに、需要の喚起を図らねればならない」と書いている。ということはこのあと、正真正銘の「需要喚起策」である「GoToキャンペーン事業」が出てくるのかと思うと、不思議なことに「G」の一字も出てない。なんと「一律10万円現金給付」や「持続化給付金」、果ては「資本投入もすべきだ」という話に飛躍していく。あれれ?

「需要喚起策はどこにいった?」と聞きたくなる展開。もしかしたらこの社説子、需要喚起策の何たるかを知らず、そのこととは別に、評判の悪い「GoToキャンペーン事業」については近寄らないようにしてビクビクしながら書いてしまったために、変な内容になってしまったのかもしれない。

景気はまだ底を打っていない

【毎日】は1面中央と3面の解説記事「クローズアップ」と論点(識者2人の話)。見出しから。
(1面)
製造業、大幅に悪化
景況感 11年ぶり低水準
日銀6月短観
(3面)
景気底ばいの恐れ
日銀6月短観
自動車下請け受注急減
「赤字垂れ流し、いつまで」

●uttiiの眼

1面は基本的に本記のみだが、最後に「設備投資」の先行きについて次のようなことを書いている。

「20年度の設備投資計画は大企業・全産業で前年度比3.2%増。6月短観では3月短観(1.8%増)から計画が大きく上振れするのが通例で、企業が設備投資に慎重になっている様子が浮き彫りになっている」と。1.8%増が3.2%になったことを「増えた」と評価してはならないということだろう。この点では、《朝日》も「設備投資も大企業・製造業の計画が2010年以来の低さ」と書いていた。

3面。見出しにある「底ばい」は景気や株価の動向を語る時に使われる経済用語で、「相場が下げるだけ下げて、下げ止まっても上昇に転じず、底を横ばいすること」というもの。《毎日》の景気動向に関する基本的な評価は、「底ばい状態が長く続く「L字型」の軌道を描く恐れが出ている」というもの。

識者2人の話は、実は《毎日》の記事以上に深刻な内容。1人目、野村総研のエグゼクティブ・エコノミスト、木内登英氏は、新型コロナによる経済の悪化は、2つの点で新しいステージに進んでしまったことを意味するという。1つは影響が製造業に広がった点、もう1つは、消費行動の変容で売り上げの落ち込みが恒常化しかねず、「一時的な悪化で済まなくなっている」点だ。

いわば、空間と時間の双方で悪影響が拡大してしまったことになり、そのため、「ショックは一回限りの打撃では収まらない段階に入っており、今後はより本格的な景気後退となるだろう」と予想する。木内氏も「L字型」の回復軌道という言葉を使っているがそれは当面のことであり、景気はまだ本当の底を打ったわけではないとも言っている。日本経済はまだ「L字」の縦棒に沿って、真っ逆さまに落ちていく途中にあると言っているようにも聞こえる。

2人目は第一生命経済研究所の主任エコノミスト、藤代宏一氏。政府・日銀の支援策によって今のところ企業の資金繰りは確保されているが、それでもコロナの影響が長期化すれば、融資が焦げ付くリスクが意識され、金融が滞るかもしれない。そのとき政府は力づくでも企業を護るべきだとする藤代氏は、「無制限に対策を打てる国だけがコロナ禍を生き残れるというシビアな展開になるだろう」と恐ろしいことを言っている。

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