帰国後、その話を中国大使館のK陸軍武官にすると、「中国人がみんな上海人みたいだと思わないで欲しい。上海人はずるがしこくて、中国人の間でも嫌われているのです」と、体制側のエリート軍人らしくない言葉が返ってきました。自分がバリケードの側にいたら、身体を張って戦うとでも言いたいようでした。天津出身のK陸軍武官は北京大学出身。文化大革命に翻弄され、農村に下放された経験を持っています。
そんなことを思い浮かべながら、今回の香港の民主化運動のリーダーたちの身の処し方を見ていたのですが、まず、上海人以上に頭を使っているという印象を持ちました。そして、単に頭を使うかどうかという問題よりも、長年の英国統治のもとで身についた西欧流の合理主義のなせる業ではないかと思うに至ったのです。
そういうわけで、私は香港の運動のリーダーたちが息長く民主化の精神を受け継ぎ、香港が完全に中国領となる2047年のころには、逆に内側から「中国の香港化」を動かしているかもしれないなどと、そんなことを思い浮かべたのです。(小川和久)
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