デキる男はやっている。成功者たちの「シナリオ書き換え力」とは

 

その「シナリオを書き換えて成功した人たち」の方は、事業家やビジネス業界に多い。大企業の会長や、社長。彼らも、はたから見るととてつもない成功を収めているように見えていますが、少なくとも1回以上は挫折を経験しています。少なくとも、前者のように、幼少の頃からの夢を実現している、わけではない。

なぜなら、子供の頃の夢は、普通、メジャーリーガーや、パイロットや、映画俳優や、ファッションデザイナーであるはずです。なかなか、小学校4年生で「僕の夢は、将来、半導体メーカーの企業のCEOになって、東証二部上場して、売りのタイミングでストックをソールドアウトして、キャッシュフローを得て生きていきたいです」と言う逸材はそういない。今の時代、まったくいないことはないかもしれないけれど、今現在、大企業の会長職に就かれている方の幼少期の時代にはほとんどゼロだったのではないでしょうか。

ということは、事業家で成功されている人は、子供の頃からの夢をそのまんま実現しているわけではない。実現していない可能性の方が高い。つまり、挫折を最低1回は経験している。おそらく、もっと経験している。

かなりの確率で、思い通りに物事が進まなかったことの方が多かった。ひょっとすると、最初は奥さんとふたりの家内工業で始めたかもしれない。従業員に裏切られた過去もあったかもしれない。銀行が融資してくれなくて、倒産寸前を味わったかもしれない。いや、実際、倒産を経験しているかもしれない。バブルがハジけたかもしれない。新規事業に手を出して、大失敗したかもしれない。そんな紆余曲折を経験して、今の地位を手に入れた。

彼らに秀でていた才能は、前述した通り「シナリオを書き換える能力」でした。自分の思い通りに事が進まなくても、そこで、また新たな夢を見て、それを実現するために、たとえそれが今までとまったく違う業種であったとしても、今まで長年にわたって身につけたスキルが仮に通用しない業界でゼロから学び直さなければいけないとしても、たとえ、今まで血の滲むような思いで貯めた資金がゼロになって、文字通り身ぐるみ剥がされても、「また挑戦することができる」、そんな能力でした。

「まいったよ~」と頭を掻きつつ、「でも、しょうがねえから、やるしかねえか、と笑い飛ばせる能力でした。ということは、彼らに学ぶ「シナリオ書き換え能力」は、大前提として、「打たれ強さ」が最大のファクターになります。あたりまえですが。

では、この「打たれ強さ」を構成しているものは、なんなのでしょう。打たれ強さを身につける、最低条件。それは…あまりにもベタで、言うのがちょっと恥ずかしく、あまり言いたくないのですが(笑)…ポジティブシンキング力…だと思います。あまりによく聞くセリフなので、「出た!おまえもか!」と言われるかもしれませんが(恥)。

ただ、日本のベストセラー啓発本に出てくる、やたら「ポジティブ、ポジティブと口癖にしたら、運が開けるよ」みたいな、そんな簡単な意味で言ってるわけではありません。日常生活においては無理して、ポジティブ!ポジティブ!とか言う必要を僕は感じていません。

むしろ、短期的な日常生活にはネガティブくらいでちょうどいい。それよりも長期的に見て「ネガティブにならない力(りょく)」と言った方がいいかもしれない。要は、この先、色々あるだろうけれど、「オレは(アタシは)結局、なんとかしちゃう!と思い込む力(りょく)」です。それが前述した「打たれ強さ」に繋がると思います。それはすなわち、「自己破壊力」なのだとも思うのです。

少し、物騒な言葉が出て来ました。自己破壊なんて言うと、ヤバ目なイメージです。自ら壊滅に向かう、という意味ではありません。破壊してもいいから、限界まで挑戦することなんじゃないかと思うのです。もちろん言葉のあやです。

建築家の安藤忠雄先生も、サックスミュージシャンの渡辺貞夫さんも、ユニクロの柳井会長も、一風堂の河原社長も、いきなりステーキの一ノ瀬会長も、決して順風満帆な人生ではありませんでした。

すべてを賭けてきて、失敗をしたこともある。どん底まで落ちた経験もある。それも一度や2度ではありませんでした。ある意味「これがダメなら終わりだな」くらいに人生を賭けたものが失敗に終わった経験をもっていらっしゃった方々ばかりでした。「自己破壊」するくらいの生き様で、そこから「自己再生」をされてきた。それこそが世間でいう「人間力」なのだと思います。

もちろん、極端な例です。なかなかゼロから、マイナスからあそこまでの逆転劇はそうそうない。でも箱の中に閉じこもった「自己啓発力」だけではなかった気がします。エラーを恐れず、言葉は的確ではないかもしれませんが「自己破壊」を覚悟で、そして毎回「自己再生」をしてきた。彼らは強烈で、峻烈で、ドラスティックな人生を生きて、生きて、生きてきた。

今、日本では「癒し系」「寄り添い系」と呼ばれる書籍が売れているらしいです。「いまのあなたのままでいい」「ナンバーワンよりオンリーワン」「存在するだけで特別なのです。人生は戦いではない」「今いる場所で花を咲かせましょう」「自分を大切にする方法」etc…こういった類の書籍はある程度一定数売れるらしい。

昨年秋に自著を発刊した際、当初予定していた出版社の担当には、実はそう進言されたこともあります。「寄り添い系で、いきませんか?」と。ホームランは打てずとも、ヒットにはなる。つまり、ある程度の売り上げを見込める、と。確かに、“そっち”を書く自信もある。1000人インタビューした中で、100人以上は、そういった「自己啓発セミナーの講師の先生」や「癒し系セラピスト」や「宗教家」の方々でした。そして、実際に彼らのセミナー、講演会もニューヨークで実施しました。それっぽいこと、書けると思います。でも、それを僕が書く必要があるのか。将来、息子が読む際に、現実の父親像とのギャップで悩むかもしれない(笑)。

なので、出版元を変えました。変えた先の担当は「高橋さんの書きたいことを書きましょう。炎上したら、その時はその時で」と笑ってくれました。もちろん、疾患を持たれている方、なんらかの心の病を持たれている方、無理しすぎてバランスを無くしかけている方には、「寄り添い系」は必要です。前述した言葉は、とてもとても素晴らしい言葉だと思っています。100%正しいとも思う。

でも、僕が日本で若い世代にセミナーや講演会などをして、彼らが健康的にも経済的にも余力がある状態で、免罪符のように「自分を大切に」「ありのままでぇ♪」のようなセリフを連呼する現状にウンザリはしていました。しかも、厄介なことに、言葉自体は何も間違えていない。1000%正しい。

でも、無理せず生きて、ビジネス書に書いてあるレバレッジを効かせた時間節約術だけで、効率重視だけで、安全第一だけで、死ぬ際「生きて、生きて、生き抜いた」と思うことができるのだろうか。前述した彼らのように。(…あれ、やっぱ、精神論や根性論になってきてます?…熱くなりすぎちゃいました笑。なので、慌てて、話の軌道修正をします)

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