武田教授が危惧。中国の急速な科学技術による監視社会の恐ろしさ

 

利便性の高さだけではない。科学技術がもたらす「監視された社会」

ところが今、話題になっている5Gとその周辺のIT技術の進歩は、全世界の人々の行動をすべて瞬時に処理できるレベルになることを示している。

例えば、すでに中国で実用化されている「天網」というシステムは、全世界の人々を、スマホの位置情報、お金の支払い、搭載された内蔵カメラ、街角に配置された監視カメラ、家庭や職場で使うパソコンなどの情報機器などから自動的(個人識別によって知らないうちにデータを取るなど)に個人データを取得して、それを整理し、監視するのに「すでに」たった2秒で出来ると言われている。

こんなことが本当にできるのか? と疑問に思ったイギリスBBCの記者が、中国に入国して軽い罪(パンを盗むというような行為)をしてみたら、たった7分で逮捕されたと報告されている。すべての人のすべての行動を観察して、違法行為や政府に反する行動などをとると、それを瞬時に逮捕できるレベルなのである。

話題になっている「タクシーの自動運転」が実用化したら、タクシーの人件費はタクシー代の4分の3だから、タクシー料金が電車賃に近くなる。そうなると、多くの人がタクシーを利用するようになるので、電車がなくなる日も来るのかもしれない。

肉体労働、知能労働を含めて、ほとんどの労働がITでできるようになるので、現在の職業の多くが姿を消すだろう。でも、失業するという心配はいらない。それだけ高度な職業ができて、より豊かな生活が実現するからだ。もちろん、銀行預金通帳、現金の代わりに使うカード、履歴書、病歴のカルテなども無くなり、人物の特定とその人物に関する情報はすべて集中的に管理されるから、便利と言えば便利だが、あまりに個人的な秘密が無くなるから困るということもあるだろう。

でも最大の問題は、技術によってそれまで考えられなかったことが起こることだ。たとえばダイナマイトが発明されたら戦場で残忍な殺戮が行われ、それを防ぐために「ノーベル賞」が設立された。第二次世界大戦では、原子力の研究を利用して原爆ができて大量殺戮が現実に行われた。

科学技術は人類を幸福にもするが、不幸にもする。(メルマガより一部抜粋)

image by: helloabc / Shutterstock.com

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中部大学教授の武田邦彦です。主に環境問題や資源に関して研究を行っております。 私のメルマガでは、テレビや雑誌新聞、ブログでは語ることが出来なかった原発やエネルギー問題に鋭く切り込みます。

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