WHOや国連の「中国支配」が止まらぬ訳。3割占める中国人が自国優先

 

コロナで中国寄りとされたWHO

Q:WHOはどういう組織で、どんな問題がありましたか?

小川:「世界保健機関(WHO=World Health Organization)は1948年に設立された国際連合の専門機関(国際連合機関)の一つです。WHO憲章の前文で『健康とは、完全な肉体的、精神的及び社会的福祉の状態であり、単に疾病又は病弱の存在しないことではない』『到達しうる最高基準の健康を享有することは、人種、宗教、政治的信念又は経済的若しくは社会的条件の差別なしに万人の有する基本的権利の一である』と宣言し、第1条で『世界保健機関の目的は、すべての人民が可能な最高の健康水準に到達することにある』として、世界の人びとの病気撲滅、健康増進、医療や医薬品普及など、幅広い活動をしています」

WHOサイト
WHO憲章(外務省資料)

「本部はスイスのジュネーヴにあり、職員数は約8,000人。最高意思決定機関は世界保健総会で、毎年5月に開かれ、全加盟国194カ国の代表が出席します。34カ国が推薦する34人からなる執行理事会があり、総会への助言や提案、総会決定の実施などを役割としています。通常の業務をおこなうのは常設の事務局で、事務局長がWHOのトップとなります」

「現在の事務局長は、2017年7月に8代目として就任したエチオピアのテドロス・アダノムです。彼は大学で生物学を学んだあとエチオピアの保健省に入り、その後、ロンドン大学衛生学熱帯医科学院で感染症免疫学の修士号、ノッティンガム大学で地域保健学の博士号を取得しました。子どものころマラリアで死に直面したことがあり、マラリア研究者としては国際的に認められています。母国では05~12年に保健大臣、12~16年に外務大臣を務め、アフリカでは大物政治家といえる人物です」

「ただし、20年1月30日に新型コロナで『国際的な公衆衛生上の緊急事態』を宣言したとき、テドロス事務局長は『中国政府は感染拡大阻止に並外れた措置を取った』『中国政府の努力がなければ、国外感染はもっと増え、死者も出ていたかもしれない』『中国は感染封じ込めで新たな基準を作った。誇張ではない』などと中国の対応を大絶賛しました。その時点での中国以外の感染者は98人で『比較的少ない』『死者はゼロ』とも強調しました。このときは、国際的な人やモノの移動制限は推奨しないとしています」

「その直前の28日、テドロス事務局長は中国・北京で習近平国家主席と会談し、29日には習主席について『稀有な指導力がある』などと語っていました。その後も、各国や各地域に向けて注意喚起を続ける一方で、中国からの入国制限は不要と再三にわたって主張しています。WHOが『パンデミック宣言』を出したのは3月11日で、これが遅すぎたとの批判を招くことになりました」

「じつはアメリカのトランプ大統領も1月24日、『中国はコロナウイルスを封じ込めるために一生懸命取り組んでいる。アメリカは彼らの努力と透明性を高く評価している。すべてうまくいくだろう。とくに、アメリカ国民に代わって、習主席に感謝!』なんてツイートしていたのです。米政権は1~2月段階で新型コロナをきわめて軽視しており、その後に国内で広がり始めてから、中国やWHOに露骨な攻撃を開始したのです」

「アメリカの署名サイトChange.orgは1月末に中国寄りのテドロス事務局長の退任を求める署名を始め、4月末までに100万人を突破しました。7月6日にはアメリカは国連のグテーレス事務総長にWHOからの脱退を正式に通知しました。ただし、加盟時の条件によって脱退は正式通知の1年後、つまり2021年7月6日となります。また、民主党の大統領候補のバイデン前副大統領は『大統領としての初日にWHOに戻る』と明言しており、現時点での脱退云々はトランプ大統領の脅しと国内向けパフォーマンスの色彩が濃いと思います」

「WHOの予算は、加盟国の義務的分担金と、加盟国や国連開発計画、世界銀行その他の機関からの任意拠出金からなっており、アメリカが15%近くと最大の資金を出しています。だから、トランプ大統領が頭にくるのもわからないではありませんが。次に拠出しているのはアメリカのビル&メリンダ・ゲイツ財団で9.8%です。国別ではイギリス7.8%、ドイツ5.7%、日本2.7%などとなっており、中国は拠出額トップ10にも顔を出していません。10番目が日本です」

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