WHOや国連の「中国支配」が止まらぬ訳。3割占める中国人が自国優先

 

Q:小川さん自身は、テドロス事務局長やWHOをどう評価しますか?

小川:「テドロス事務局長が露骨に中国よりの姿勢を見せすぎたことはたしかで、問題だったと思います。新型コロナウイルス感染症対策分科会長の尾身茂さんは2月半ば、日本記者クラブでの会見で『事務局長は「武漢の対応は遅すぎ、残念だった」というべきだった』と述べています。下記リンク先の赤坂清隆さんはOECD事務次長・国連広報担当事務次長などを歴任した外交官ですが、『テドロス氏は十分なメディアトレーニングを受けていないようだ』という見方ですね」

日本を代表する元・国際公務員が明かす なぜ中国寄り? WHOの正体
(『中央公論』2020年4月号より)

「もっとも、中国一辺倒すぎて問題はあったとはいえ、その後の中国が新型コロナをうまく押さえ込み、工業生産なども回復させつつあること、各国のPCR検査に絶大な協力をしていること、マスク・フェイスシールド・医療用ガウンやエプロンなどのPPE(個人防護具)を一手に生産していることなどを考えれば、新型コロナ対策で中国を抜きにすることは到底考えられません。2年目、3年目も国際的な協力が不可欠に決まっていますから、中国の顔も立て、アメリカその他を怒らせないようなやり方をしていくしかないでしょう」

「エチオピアは人口1億1,154万人と、アフリカではナイジェリアの2億697万人に次ぐ人口大国ですが(1億人超はあとエジプトだけ)、新型コロナ感染者数累計は5万3,304人、死者は828人と、新型コロナでは非常に成績がよいのです。100万人あたり死者は日本が10人、エチオピアは7人です。アフリカは南アフリカ(感染者数約63万人)を除けば、エジプト10万人以下、ナイジェリア5万4,000人と感染者が少ないのです。人種的な理由や、まだ感染が広がっていないという理由もあるかもしれませんが、中国が盛んに検査キットを送ったり、自国のノウハウを伝えたりしているかもしれません」(データは9月2日Worldometerによる)

「WHOについては、1980年に天然痘の撲滅に成功したこと、続いてポリオ撲滅まであと数か国まできていることが、大きな功績とされています。しかし、2009~10年の新型インフルエンザ流行ではパンデミック宣言をしたものの実際には大流行とならず、大量のワクチンがムダとなり、〝偽のパンデミック〟と批判されました。14~16年ころの西アフリカのエボラ出血熱でも、初期対応に失敗し、国境なき医師団の医師たちは『まったくの役立たず』と吐き捨てていました。WHOには、どうも官僚的で現場対応に弱いという問題があるようですね」

「なお、台湾はここ数年、WHO加盟はもちろん、WHO総会へのオブザーバー参加や専門家会合への参加が拒否される事態が続いていましたが、20年2月に開かれた新型コロナウイルス関連の専門家会合には参加が認められました。台湾は新型コロナで迅速に対応し、押さえ込みに成功しましたから、WHOも無視できず、中国も黙認したということでしょう」

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