機内サービスの終焉か。新型コロナで客室乗務員大リストラ時代に

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新型コロナウイルス感染拡大により大打撃を受け、客室乗務員の削減等を検討する航空会社が続出する中、遂に米ユナイテッド航空が日本国内の客室乗務員の拠点の閉鎖を発表するなど、「憧れの職業」が今、窮地に立たされています。花形職業とも呼ばれた客室乗務員の需要は、この先回復するのでしょうか。それとも巷間囁かれるように、AIに取って代わられてしまうのでしょうか。今回のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』では、自らもANA国際線客室乗務員の経験を持つ健康社会学者の河合薫さんが、客室乗務員の行く末と、生産性ばかりを追求し「人」を酷使してきた航空会社の末路を考察しています。

プロフィール:河合薫(かわい・かおる)
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。

スッチーからCA、そしてAIの時代へ??

遂に…、来るべきときが来てしまいました。米ユナイテッド航空は14日、新型コロナウィルスの影響によるリストラの一環で、日本国内の客室乗務員の拠点(成田空港)を10月1日付で閉鎖する方針を発表しました。

会社側は「希望者は米国の拠点で引き続き働ける」としていますが、永住権がないなどで移住できない場合、事実上の解雇。約270名の客室乗務員が失職する可能性があります。

コロナ禍での航空業界の厳しさは、繰り返し報じられて来ました。

ANAは客室乗務員6,400名を対象として、1ヶ月に3日~5日程度の一時帰休を4月から実施していますし(雇用は維持する方針)、海外ではルフトハンザが6月中旬、従業員の16%に当たる2万2,000人が余剰になるとし、人員削減やワークシェアリングについての協議を始めたと報じられました。また、エールフランスでは22年末までにグループで7,580人の人員削減を行うといいます。

この先どうなってしまうのか?コロナが終息しても客室乗務員の需要が回復しないのではないか?これを機にAIに取って代わられてしまうのではないか?

「空の道」が制限されてしまったことで、世界中の航空関係者が窮地に追いやられているのです。

個人的な話で恐縮ですが、バブル期に空を飛んでいた私は、今回の航空業界の動きに「時の流れの速さと、時代の変化」をしみじみと感じています。

私が飛んでいたときは、まさにイケイケで、航空業界の先には「明るい未来」しか想像できませんでした。数年後には、コンコルドのような超高速の飛行機が空を飛び交い、「ニューヨーク日帰り」「ロス→パリ、ついでにミラノ」といったスケジュールが当たり前になると信じていました。ところが、空は「速さ」より「安さ」を求めるようになった。

路線の拡大と生産性の向上を目的に、燃費効率のいい航空機を大量に購入し便数を増やす一方で、低価格かつサービスが簡素化された航空輸送サービスを提供するローコストキャリア=LCCを拡大させたのです。

その先陣をきったのが、サウスウエスト航空やライアンエアーです。

サウスウエスト航空は「顧客第二主義」「従業員の満足第一主義」というポリシーを掲げ、「いちばん大切なのは従業員だ。あなたが従業員に接する態度は、そのまま従業員が顧客に接する態度になる」という経営哲学を貫きました。

その結果、1973年の創業以来40年以上連続黒字経営を続け、顧客満足度が高いことで世界に知られることになります。しかも、アメリカの航空業界でリストラが相次いだ同時多発テロ事件の年でさえ、サウスウエスト航空は一切解雇を行わず、さらには赤字を出さなかった唯一の航空会社となりました。

そこでサウスウェスト航空のビジネスモデルを真似たLCCが、世界の空に羽ばたく時代に突入したのです。

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