学研の本気が日本を変えた。「科学と学習」休刊後のV字回復 意外な2本柱

 

「学習」と「科学」の休刊~出版社から大変身

ピーク時の1979年には、「学習」と「科学」だけで年間670万部。会社全体の売り上げは1000億円と業界トップを走っていたが、少子化などで購入者が激減。売り上げは下がり続け、2009年に「学習」と「科学」は休刊する。

ところが翌年、宮原博昭(60)が学研ホールディングス社長に就任すると、10年連続増収に転じ、去年は1400億円を叩き出したのだ。

ライバル出版社、集英社の堀内丸恵社長は宮原を「出版界で一番バイタリティーがある、エネルギーがある。ちょっと元気をもらっています」と評する。

「一番大きい改革の柱は、少子高齢化の日本の中でどう戦うかです」と言う宮原は、ジリ貧だった学研をどう改革・復活させていったのか。

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宮原は、学習塾の「学研教室」を約1万5000カ所に増やした。

日本卓球界のエース、張本智和選手(16)は小学1年生から学研教室で学び始めた。忙しくても学べる秘密が、好きな時間に通え、個人のレベルに合わせた教材があること。子供たちは自分のレベルに合わせた問題を自力で解いていく。分からないところがあっても先生はすぐに答えを教えず、自分で考えることを重視している。

「まず、諦めない。最後まできちんと100点になるまでやる。こちらで『これはこうでこうだからこうですよ』と説明するのではなくて、こちらが質問して、お子さんに答えていただくことを心掛けています」(岡本敦子先生)

また学研は意外な分野に進出する。神奈川・藤沢市にあるサービス付き高齢者向け住宅「ココファン藤沢SST」。月々の費用は約16万円から18万円(生活支援サービス費などを含む)。有料老人ホームに比べて初期費用の安さが人気だ。入居者の今井芳子さん(88)は、「学研という名前にも引かれて。自分の選択は間違ってなかった」と言う。

この「サ高住」には「教育の学研」だからこそできる取り組みがある。入居者が熱心にやっていたのは、お手本をなぞって字を書く脳を活性化させるプログラム。「上手な字を書くのではなくて、お手本の文字を正確に写し書きすることによって脳が活性化されると言われています」と言う。

1階には保育園が併設されており、自然に子供たちと入居者の交流が生まれる。さらに夏祭りなど、定期的に交流の場を設けている。

「いつもお話をされない方も、多世代交流の時だと言葉が出る。どんなリハビリよりも笑顔が出るし、言葉が出ます」(「ココファン藤沢SST」事業所長・佐藤奈緒)

学研が手がける高齢者住宅は今や1万3000室と業界トップクラス。教育事業と並んで、高齢者福祉が収益の二本柱となっているのだ。

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