ワクチンに過剰な期待は禁物
米ファイザーと独ビオンテック連合、米モデルナがそれぞれ数万人を対象とした第3相臨床試験の中間解析で、90%、94%の有効性を確認できたと発表し、ニュースが湧き立っているが、上博士は、「大きな一歩」と評価しつつも、
- あくまで中間解析で、最終結果が出るまでは実際に使い物になるかどうかは分からない
- 〔使い物になった場合も〕感染者を減らすだけなので、果たして重症者を減らすことになるのかは不明
- 重症化するのは高齢者や持病を持つ人で、こういう方はワクチンを打っても免疫ができにくい可能性がある
- 炎症反応などの副作用や合併症のリスクが高いワクチンになりそうで、それを見極めるには時間がかかる…
などの理由を挙げて、「過剰な期待」をしないよう戒めている。実際、米国の権威ある科学誌『サイエンス』11月18日号は、今回のワクチンが短期的な副作用として強い痛みと高熱が出て救急車を呼ぶかどうかというほどの状態が12時間も続いたケースがあることなどを指摘。翌日の官房長官会見でこれを訊かれた加藤勝信は「接種の是非は自ら選択することになる」と、自己責任論で逃げた。
また最近の知見として、コロナに感染して回復した人たちの間で微熱、倦怠感、味覚異常、聴覚異常、脱毛など様々な後遺症が長期に渡って発症することが明らかになり、どうやらウイルスが神経組織を攻撃して免疫異常を引き起こすのではないかと考えられている。とすると、非感染者にワクチン接種を施した場合も、人によって、また何らかの既往症を持つ人の場合はなおさら、同様の免疫異常に遭うリスクを否定できない。
こうしたことを無視して事を急ぐと、未知の薬害事件を引き起こす危険があることを理解する必要がある。菅の希望的観測シナリオにとってこれも大きな障害となろう。
(メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2020年12月7日号より一部抜粋・文中敬称略)
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