尖閣で中国を挑発した日本船の正体。裏で糸を引く自民極右議員の実名

 

領海侵犯は増えていない!

以上の区別を踏まえた上で、海上保安庁HPにある「尖閣諸島周辺海域における中国公船及び中国漁船の活動状況について」を見て頂きたい。直ちに目に入るのは次のグラフである()。赤い棒グラフが領海に侵入した中国公船の月別合計隻数、青い折線グラフは接続水域を通航した中国公船の月別合計隻数である。

すると、赤い棒グラフのほうは2017年のほぼ月間12隻程度から、18年にはだいぶ減ったのが19年からほぼ12隻程度に戻り、20年にはそれよりやや減り気味に推移していることが見て取れる。最も重大な「領海侵犯」は増えていないのである。「増えていない」と言ったって、侵入してくること自体が問題じゃないかと日本政府も反中右翼も声を荒げるのだけれども、そもそも中国も尖閣領有を主張して折り合いがついていない以上、あちらの立場として引き下がるわけにはいかないのだろう。

元々中国は尖閣に特に関心を向けておらず、その証拠に2012年9月までは赤の棒グラフはほとんど動いていない。その月に野田内閣が浅はかにも石原慎太郎の挑発に乗って尖閣を国有化したことから赤の棒グラフが一気に増えて大問題となったのだが、しかし1年後にはピタリ鎮静化し、月別合計隻数8隻前後が続き、16年8月の突出〔注〕を例外としてまた8隻前後に戻った。

海上保安庁のこのグラフの下にある月別隻数のデータを見ると、ほとんどの月で中国海警局の公船が領海に入るのは標準で3回、1回が2~4隻のユニットであることが知れる(文末添付資料)。なぜこのようにほぼルーティーン化されているのかに疑問を持って海保に問い合わせると、「月3回程度というのが頻繁ということです」とニベもない。そこで旧知の中国人記者に本国海警局の事情を探ってもらうと、驚くべきことが分かった。

海警局で東シナ海を担当するのは東海分局で、その下に上海、浙江、福建の3総隊があり、それらが原則として月1回ずつ1ユニットを派遣するので月に3回となる。しかも、15年冬以降は中国側が日本海保に対し「明日は行きますから」と事前通告し、また領海内に留まる時間も2時間と決めているというのである。

「それって、馴れ合いなんじゃないの」と中国人記者に問うと、「ええ、中国側の認識はそうです」とこともなげに言った。その基本的には馴れ合いのゲームが今も続いていることを示すのが、図の赤棒グラフである。

〔注〕この年、中国海警局は夏の東シナ海漁業の解禁に当たって事前管理を誤り、多数の漁船が日中暫定線を超えて尖閣の日本領海にまで殺到するのを防ぎきれず、そのため海警船が領海側に入って漁船を押し戻さなければならなかった。

接続水域への通航は確かに増えている

さて、図の青折線グラフを見ると、16年8月の突出をはじめ大きな凸凹はあるけれども、その凸凹は主として中国漁船の取り締まりの都合で生じていると考えられる。それにそもそも、上述のように、接続水域やそれと一部重なる日中暫定措置水域は、中国公船が自由に通航できる範囲で、それをどうのこうの言う権利が日本にあるわけでもない。なのに、これもすべて日本に対する「軍事的圧力」であるかに海保や外務・防衛両省が発表すると、それを反論も検証もせずにメディアが振り撒くのである

確かに19年5月の突如として132回への飛び跳ねを機に、青線が100回前後を上下する高水準に達しているのは事実だが、それがどういう理由によるものかは、日中関係が正常であれば内々に問い合わせれば済むことで、身構えるような話ではない。

とはいえ、いささか気になるのは、この中でも特に20年5月から8月にかけての青線グラフのナーバスな動きである。しかもこの5月というタイミングは、上述のように、赤線グラフが示す領海への中国公船の回数・隻数はそのままでも、以前は「2時間程度」としていた滞留時間の“節度”が破られて長時間滞留し、さらに領海内を航行する「日本漁船を追尾する」という挑発行動に出ていることが報じられたことと合致している。何があったのかな?

そこを解く重要なヒントが岡田充「海峡両岸論」に含まれていたということである。

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