SNSいじめで少女が自殺。報復を怖がる被害児童に大人がすべき事

 

2.の「学校全体としての組織的な取り組み」について、付加説明します。昨年12月に、全校生徒に対してSNS等に嫌がらせの書き込みをしないよう指導した、と報道されているので、学校としては「取り組んだ」と言いたいところでしょう。

しかし、SNSというツールで人間関係上での困難をかかえている、子どもたちには、直接的な指導なくしては伝わりません。心に響くことはなかなかないのです。

ただ単に静観するという日和見的な教師では、いじめ解決が長引くことは言うまでもありません。さらに注意すべき点は、生徒との心の距離が近くて、教育に情熱の有るタイプの先生にも落とし穴があることです。それは、加害者生徒のほうの背景、つまり家庭での虐待や本人の資質を知っているがゆえに、「その子がなぜ怒りやストレスを他人に攻撃的にぶつけてしまうのか」ということをよく理解しているからです。そのため、情に厚い先生は、ひとりで問題を抱え込んでしまう傾向があり、時間を長引かせてしまうことがあります。

本来、こんなときのために組織があるのです。教務主任、生活指導の先生や学年主任もいます。担任の代わりに叱りつけ役、嫌われ役となって鬼のような役割を果たす人も必要なのです。制度や組織は、一度、創ったら終わりではないです。それを機能させるためには、不断の努力と改善に次ぐ改善、創意工夫が必要です。

有識者による「いじめ対策検討会議」で経緯や対応を調査すると報道されていますが、会議は、死亡した子どもが残したメモやメール、ご遺族である保護者からの聴き取りや、事故を発生させた学校への聴き取りや生徒へのアンケートを実施させます。しかし、一般的には、加害児童生徒に対して直接、聴き取ることはほとんどありません。子どもを追い詰めたり傷つけたりすることになるのでは、と恐れているのかも知れません。一方、被害者のご遺族は、様々な背景事情をお話しされます。お子さんを救えなかったという悲しみもあり、自分を責めるような言葉も口にされます。

半年後、あるいは、1年後、有識者会議からの結果が公表されますが、被害者側からの聴取に基づいて、被害者側の家庭の事情や被害者の性格や傾向性などが詳細に記載されてしまうのです。その結果、被害者側にも原因があったかのような取られ方をされてしまい、加害者の加害意識が薄まってしまう可能性に危惧を覚えます。

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