卑怯な中国とロシア。国民虐殺のミャンマー国軍に恩を売る真の狙い

 

ミャンマーを舞台に対立を極める欧米と中ロ

また、民主化運動を孤立させようと、ロヒンギャを除く少数民族との融和を図ろうと画策しましたが、これまで少数民族を、NLDによる政権が続いた10年間に、いじめ倒したのが国軍の方針であったことを、都合よく忘れようとしたのでしょうか?

結果、少数民族とその武装勢力は、ことごとく民主化運動を支援する側に回りました。皮肉なことに、国軍が少数民族のご機嫌取りのために釈放した“政治犯”によって、各勢力の統制と士気が上がるというおまけもつけて。

国軍による暴力が激化し、軍の統率が取れていないことが明らかになるにつれて、警察や消防といった治安部隊も、国軍サイドから離脱していき、民主化運動側について、デモをより統制とれたものに変え、かつゼネストを公的な機関にも広めることで、国軍による政府の機能をマヒさせています。

国民、少数民族、治安部隊、そして国際社会からの反発と反対を前に、アウン・ミン・フライン総司令官率いる国軍は冷静さを失い、手当たり次第に反対勢力に対しての武力行使に乗り出したと思われます。

結果として、国軍に対して、民主化運動と少数民族の武装勢力が手を結んで交戦状態に入ってしまい、ミャンマーはここままでは、また泥沼の内戦に突入してしまいかねません。

しかし、国軍と少数民族の武将勢力では、戦力も軍備のレベルも雲泥の差です。

国軍が空爆や重火器を使った一斉攻撃を仕掛けることができるのに対し、少数民族の武装勢力は、あくまでもゲリラ戦の方式をとらざるを得ません。国軍の統率が取れていない中、構成員に恐怖心と不安を植え付けるという、心理戦の観点からはダメージを与えることはできますが、国軍を駆逐して、現政権を終えさせる、逆クーデターを仕掛けるほどの力は、すべてが結集しても存在しません。

民主化運動サイドと少数民族の武装勢力側が“勝利”するとすれば、それは、どこかの国の何らかの後ろ盾が存在する場合のみです。

それがかつて噂された中国なのか?それとも、民主化運動を支え、国軍によるクーデターを激しく非難する欧米サイドなのか?

現在のミャンマー情勢を見てみると、問題は国内にあり、悲劇が繰り返されているにもかかわらず、欧米と中ロはミャンマーを舞台に対立を極めています。

欧米サイドは“人権”を盾に、国軍によるクーデターとその後の蛮行を激しく非難し、国連安全保障理事会を通じて、対ミャンマー制裁の必要性を訴えかけています。

それに対し、中ロに代表されるグループ・ブロックは、表面上は【内政不干渉の原則】という看板を立て、平和裏の解決を望むと発言していますが、何もしていません。どちらかというと、欧米諸国からの人権プレッシャーに押されたミャンマー国軍が中国ロシアサイドに接近してくるのを待っているように見えます。ゆえに、中国もロシアも、国連安保理常任理事国として、ミャンマー制裁に反対し、国軍に恩を売っているようにも見えます。

ただ、残念なことに、双方ともに“ミャンマー国民の惨状“を見てはいません。ゆえに、具体的な出口をミャンマーに用意してやることも叶わないでしょうし、ましてや関心があるかも不明です。

ミャンマーは両サイドにとって地政学的な重要拠点に位置付けられていますが、あくまでも欧米と中ロの対立の舞台は、台湾海峡、香港、南シナ海、東シナ海、そしてコーカサス・中央アジアで、ミャンマーは、悲劇が起きているにもかかわらず、直接的な優先順位認定を受けていません。

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