買っても大丈夫か。1981年以前に建てられたマンション耐震性不足の深刻度

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1978年に発生した宮城県沖地震による甚大な家屋倒壊被害を受け、1981年に改正された建築基準法ですが、思わぬところで影響を被る方も存在するようです。今回の無料メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』では著者の廣田信子さんが、改正以前に建てられたマンション住人からの相談を紹介。その内容は、改正後に造られた集合住宅に住む人間にとっても無縁と言えるものではありませんでした。

こんなに頑強に造られているのに耐震性不足なんて納得がいかない

こんにちは!廣田信子です。

旧耐震基準(1981年5月31日までの建築確認で適用された基準)で造られたマンションの理事長より、恨み節ともいえる相談(?)がありました。耐震診断をして耐震性が不足していると分かったら資産価値が下がる…という組合員を説得してようやく実施した耐震診断(簡易診断)の結果に愕然とした…と。

大手ゼネコンが、国の基準より大幅に安全性を見た基準で強固に造っているという触れ込みのマンションで、実際に、柱も梁もしっかり造られている。それなのに、耐震性不足がかなり不足しているという結果に納得がいかない。自分の中では、これだけしっかり造られているのだから、そんなに悪い結果は出ないだろうと思っていた…と。

耐震基準や耐震性確保の方法については、いろいろな変遷もあり、なかなか説明が難しいのです。私たちも何度か勉強会を実施してきました。記事に書いたこともあると思いそれを探して紹介しました。ちょうど4年前の記事で、3回に分けて書いています。

改めて読んで、手前味噌のようですが、専門的知識がない方に読んでもらえるように書いたので、分かりやすくかけているな…と思いましたので、興味がある方には、改めて読んで頂ければと思います。

「固く」「しなやかに」というから耐震性はわかりにくい
耐震診断の「納得がいかない」を一歩進めて
なんで新耐震基準なのに耐震スリットがないの?

建物は100年でももつといわれますが、その間、建物や設備に求められる基準はどんどん変わります。竣工の時は、最新の基準に沿ったものであるはずが、基準は変わります。

今、近くに建築中のマンションは、長期優良住宅の基準を大幅に超えた長寿命化基準を満たし、耐震性、地盤の液状化対策も万全で、しかもZEH(ゼッチ ※)で太陽光パネルで使用電力の多くを賄う仕組みです。

※ ZEH(ゼッチ)とは「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」の略。ひと言で言えば「使うエネルギー≦創るエネルギー」になる住宅。脱炭素社会への重要戦略のひとつ。断熱、省エネ、創エネの3つを兼ね備えた住宅

また、在宅勤務に対応したインターネットの通信量が確保され、コワーキングスペースも充実しています。マンション内のシェアリングサービスも工夫されています。しかし…これだけ考慮されていたら万全かというと、決してそうではなく、きっと、また新しいニーズや基準が出てくるのでしょう。

最新だったはずの施設が経年と共に、逆に負担になることもあるでしょう。一時流行った託児施設やミニ店舗は、維持管理が大変で、今は、すっかり姿を消しましたから…。常に、住宅(マンション)に求められる基準もそこに暮らす人のニーズも変化しているのです。変化することを前提に、今のまま守っていくこと、変える必要があることを選別して対応していかなければなりません。

45年前のパンフレットにある「売り文句」が、今となっては通用しないことは、誰のせいでもないのです。

image by: yoshi0511 / Shutterstock.com

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【著者】 廣田信子 【発行周期】 ほぼ 平日刊

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