対中国で日本がナーバスにならざるを得ないのを承知で、米国が求めてきているのが「中国抜き」のサプライチェーン構築だ。共同声明には以下のように盛り込まれた。
日米両国はまた、両国の安全及び繁栄に不可欠な重要技術を育成・保護しつつ、半導体を含む機微なサプライチェーンについても連携する。
経済安全保障の見地が色濃い。中国製の端末を通じて情報を盗み取られたり、重要技術が流失するのを防ぐため日米が協力し、半導体やレアアースなどで、「中国抜き」の調達体制をめざすというのだ。
機微情報を扱っていながら無防備。それが、これまでの日本だった。新幹線技術を中国企業に流用された川崎重工や、高給を提示した韓国企業に技術者ごと有機ELをさらわれたパイオニアなど、技術流出で臍を噛んだ例は枚挙にいとまがない。
だが、アメリカや日本の経済が中国に依存しているのも事実だ。中国の巨大マーケットは魅力だし、中国からレアアースや半導体材料などの供給なしに製造するのが難しいエレクトロニクス商品は数多い。経済の完全なデカップリング(分断)は「至難の業」と霞が関の官僚は言う。
中国で儲けてきた日本企業が、すぐに「脱中国」に向かうとも思えない。とはいえ、台湾有事とまでいかなくとも、今後も日米が一緒になって中国に厳しい姿勢を示せば、中国からの制裁は避けられないだろう。中国に替わる「世界の工場」として日米豪台に注目されるインドへの進出も考えるべき時がきたといえよう。
ウイグル族への人権侵害、香港市民への弾圧。およそ一流国家とはいえない野蛮なふるまいを続ける中国が、台湾を奪い、尖閣を足がかりに日本を狙い、やがてアジアはおろか、世界の独裁国家をひきいて覇者になるのでは、などと考えるだけでも気分が悪くなる。そんなことをさせてはならない。
トランプ前大統領は、ただひたすら、アメリカファーストで中国を抑え込もうとしたが、バイデン大統領は同盟国を巻き込んで、共に中国の野望を打ち砕こうとする。日本は、いよいよ他力本願ではいられなくなった。
image by: 首相官邸