中国で罰金170万円の新法案も。大食いTV番組の“気持ち悪さ”に世界が気づきはじめた

 

中国では客をもてなす際に、食べきれないほど料理を並べる習慣があるため、多くの飲食店から毎日のように大量の「食べ残し」が廃棄されています。その総量は年間に約1800万トン、5000万人分の1年間の食糧に該当する量です。この問題に対して、昨年8月11日、習近平国家主席はメディアを通じて「中国人の食べ物の浪費問題は深刻で私は心が痛む」「皿の上の一粒一粒が人々の苦労のたまものだと知るべきだ」というメッセージを発信したのです。

実は、習近平国家主席がこのメッセージを発信するのは、前回2013年に続いて二度目なのです。前回はメッセージだけで国民の自主性に任せたので、ほとんど行き届きませんでした。そのため、今回は法整備をして、飲食店で食べきれないほど注文した客にも、その料理を提供した店にも罰金を科す「反食品浪費法」を策定し、全人代(全国人民代表大会)の常務委員会が4月29日に可決したのです。

この法律に違反した場合、飲食店には日本円で約17万円の罰金が科せられますが、それどころではないのが、中国で「大胃王」と呼ばれている大食い動画配信者たちでした。中国でも大食い動画は人気で、国内メインの動画サイトなどにも数多くの「大胃王」がおり、中にはチャンネル登録者数が1000万人を超え、年間に何億円も稼いでいる人もいます。

しかし、今回可決された「反食品浪費法」では、こうした大食い動画も「食品浪費行為」と見なし、罰金の対象としたのです。その額、なんと約170万円。動画配信は不特定多数への影響があるとして、飲食店への罰金の10倍に設定されたのです。そのため、中国の「大胃王」たちは、過去動画の削除を余儀なくされただけでなく、収入源を失うことになってしまったのです。

もともと中国の「大胃王」の中には、動画を編集して完食したように装っていたイカサマ行為が発覚して炎上した人や、生配信中に無理に食べ過ぎて倒れ、病院に搬送されて亡くなってしまった人などがいて、たびたび問題にされていました。こうした背景があったため、昨年8月に習近平国家主席が「食品浪費」を戒めるメッセージを発信した際には、「大胃王」を問題視する世論も高まり、今回の法律に盛り込まれたようなのです。

真面目に良識を持って取り組んで来た「大胃王」には気の毒ですが、世界では全人口の1割以上に当たる約8億人が飢餓に苦しみ、そのうち数千万人が毎年餓死し続けているのですから、富裕国のエンタメ化された大食いは、そろそろ抜本的に見直す時期なのかもしれませんね。

image by: Shutterstock.com

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