マンション住人が認知症で施設へ。滞納したお金を回収する方法は?

 

確か、認知症で老人ホームに入居している組合員(成年後見人が選任されていない)に対する訴訟に関する判例があったはず…と調べました。札幌地裁平成31年1月22日判決です。

判決では、通知の内容も理解できない状況で形式的に弁明の機会を付与する通知を届けても、それでは、弁明の機会を与えたことにはならない…とした上で、この場合、訴え提起後に特別代理人が選任され、特別代理人に対して弁明の機会が与えられたことから、管理組合の請求を認めています。

特別代理人とは…本来の代理人が代理権を行使することができない(代理人の破産など)又は、不適切な場合(利益相反行為など(民法第826条、民法第860条))や不存在な場合(民事訴訟法第35条)に、法律に基づき定められた裁判所に申し立てを行い選任し、本来の代理人が行う職務を行う特別な代理人のことをいいます。親族でなくても利害関係人が選任の申し立てができます。

この判例では、弁明の通知を本人宛に送った上で総会決議を行い、訴訟を提起した上で、訴訟を円滑に進めるために、特別代理人の選任を求め、その特別代理人に対して、再度弁明の機会を与えるという形をとっています。成年後見人の選任がされない場合は、このような方法もあるわけです。

そこまでするかどうか…は管理組合の判断ですが、まず、事情があれば聞きます。成年後見人の選任を請求して、任意売却されるのが一番の得策だと思います…と、責める気持ちを排して、Bさんとの対話を試みてはどうでしょうか。Bさんはいろいろ追い詰められて、現実から逃避しているのかもしれません。それでもだめな場合は…長引かせていいことは何もなく、粛々と法的手続きをとる方がいい気がします(あくまで、個人の感想ですが…)。

image by: Shutterstock.com

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【著者】 廣田信子 【発行周期】 ほぼ 平日刊

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