自民「1.5億」再燃の怪。岸田氏が仕掛けた首相の座を狙う大バクチ

 

が、それだけに岸田氏は心穏やかではいられない。病後のはずの安倍前首相があまりにも派手に政治活動を再開しているからだ。

自民党憲法改正推進本部の最高顧問や、原発の新増設などをめざす議連の顧問に就任したかと思うと、さまざまな会合で野党批判を繰り返す。7年8か月に及んだ安倍政権を振り返り、沈思黙考するいとまもない様子である。

つい最近では「半導体戦略推進議員連盟」の設立に最高顧問として加わったが、なんとその議連の会長は甘利明氏であり、もう一人の最高顧問は麻生太郎氏である。盟友うちそろっての議連発足には、政局がらみのニオイがする。

安倍氏の再再登板を噂する声が日増しに強まり、岸田氏は、宏池会伝統の「寛容と忍耐」で静観できなくなった。総理への道は安倍・麻生同盟の支援がなければ切り開けない。二人に自分の存在をアピールし、再再登板ムードに風穴をあけるにはどうすればいいか。

岸田氏が広島県連会長として、1億5,000万円の使途を明らかにするよう党本部に迫った裏には、そんな考えがあったのではないだろうか。

19年参院選で、岸田派重鎮、溝手顕正候補の10倍もの資金を河井陣営に配った党本部への不信感は、いまだ広島県連に渦巻いている。その当然の疑念を県連会長として党本部にぶちまける形で、あらためて問題にし、当時の総裁であった安倍氏に揺さぶりをかけたとも見えるのである。

ときの総理大臣が、側近の妻をなんとしても選挙戦で勝たせるため、国の政党交付金を主とする破格の軍資金を党本部から出させた。安倍氏にまつわる疑惑の核心である。

首謀者は前総理、使途は選挙。分かっていて、岸田氏は「誰が」ではなく、「使途」だけ追及するフリをしている。潤沢な選挙マネーがあればこそ、河井夫妻は買収に走ったのだ。夫妻を議員辞職に追い込んだ選挙違反事件の責任の一端が誰にあるかは、安倍氏自身がいちばん知っている。

岸田氏の動きは安倍氏の反発を招き、逆効果かもしれない。しかし、岸田氏と広島県連の口を封じるため、再再登板をあきらめて支援に回ってくれれば、岸田氏の期待通りだ。要するに、岸田氏は乾坤一擲の大バクチに出ているのだ。

菅首相も、このままでは終われない。内閣支持率を上昇に転じさせるため、血まなこになって進めるワクチン接種。高齢者接種1日100万人、7月末までに完了。難題を突きつけられた自治体が、あたかも首長の能力競争のように、接種スピードアップの工夫をしはじめた。高い目標を掲げて地方の尻を叩く。接種が菅首相の思惑通りに進めば、世論が変わり、党内情勢もまた変わる。菅・二階の足並がそろい、再び安倍・麻生がそのバックアップをすることも考えられないわけではない。

それでも、岸田氏にしてみれば、攻勢に出た今が権力ゲームのヤマ場である。総裁候補といわれながら、存在感の薄かった岸田氏の、珍しくも仕掛けた大勝負。曖昧回答でごまかし通すであろう二階執行部に対し、やすやすと引き下がるようなら、またまた悲願の成就は遠ざかる。

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image by: 岸田文雄 - Home | Facebook

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