競争せず心静かに生きる中国若年層「タンピン族」から日本が学ぶ事

 

6.中国経済の危機

中国は、日本以上に所得の格差が大きい。そもそも中国では戸籍に格差がある。農村戸籍と都市戸籍があり、農村戸籍の者は都市への移動が厳しく制限されている。また、大学進学でも、各省で合格者の割り当てが決まっており、都市戸籍の方が合格ラインが低く設定されており、圧倒的に有利である。

また、就職でも企業は都市戸籍保有者を採用の条件として掲げることが多い。苦労して一流大学に進学しても、戸籍差別の壁を超えることはできないのだ。

そんな中国社会に、不動産バブル崩壊、コロナ不況、西側諸国との対立による輸出減等による経済悪化に拍車をかけている。

中国は、外貨を輸出で稼ぎ、不動産開発で国内経済を回していた。企業も個人も積極的に不動産投資を行い、資産の多くは不動産で所有している。

不動産価格は高止まりとなり、最早生活のための住宅の価格を超えてしまった。投資目的で購入する人もいるが、次の買い手が見つかるかが見えない。まさに不動産バブル崩壊前夜の状況である。

既に、大手不動産会社が倒産し、不良債権を抱えた金融機関の倒産も始まっている。そういう意味では、不動産バブルのほころびは始まっているが、共産党政府の強権でかろうじて抑えている。

国内経済の要である不動産ビジネスが止まっただけではなく、外貨を獲得してきた輸出ビジネスも減少している。米国との対立、香港やウイグルの人権弾圧等の問題を抱え、中国は世界から孤立してしまった。

7.頑張らない若者の「躺平主義」

若者の就職も困難となり、失業者も増えている。また、中国では結婚のハードルも高い。お金がなければ結婚もできないのだ。貧富の格差は埋まらず、既にチャイナドリームは神話となっている。

そんな厳しい現実から逃避する動きが出てきた。それが「躺平(タンピン)主義」である。躺平とは「横たわる」の意味。

「頑張らない、競争しない、欲張らない。最低限度の消費で満足し、心静かに暮らす」のが躺平主義である。

ネット上で多くの若者が躺平主義の実践を宣言し、「躺平族」が大量に出現。中国の社会現象になっている。

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