追い詰められる女性医師たち。コロナで「医療逼迫」の裏に隠された真実

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次々と襲いくるコロナ感染の波の中、盛んに叫ばれていた医療現場の逼迫ですが、その裏にほぼ伝えられなかった「事実」があることをご存知でしょうか。今回のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』では著者で健康社会学者の河合薫さんが、「若手と女性医師に関する問題を整理したレポート」を取り上げ、「医療崩壊」「医療逼迫」の裏側に限界境界線を越えた医療関係者が多数存在することを紹介。さらに、その事実を真正面から受け止めない日本の為政者を厳しく批判しています。

プロフィール:河合薫(かわい・かおる)
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。

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「医療逼迫」の裏に隠された事実

“コロナ禍”という不思議な言葉が日常的に使われるようになって、1年半以上が経ちました。その“コロナ禍”は全ての人を不安にさせましたが、その影響が平等でなかったことは「周知の事実」です。しかし、その周知の事実の中には「知られていない事実」もたくさんあります。

そこで今回はその中のひとつ。コロナ禍における「若手と女性医師に関する問題」を取り上げたレポートが海外ジャーナルに投稿されたので、その一部を紹介します(「The Vulnerable Cardiologists of the COVID-19 Era」)。

このレポートは感染リスクの高い循環器系の若手と女性医師を対象に実施された調査を整理したレポートで、次のようにまとめられています。

  • 若手医師は自身の感染リスクに加え、家族へ感染リスクへの不安、さらには自身と家族が医療従事者として社会的差別を受ける可能性に高い不安があった。
  • 日本医師会女性医師バンクに登録している女性医師902人(全体の7%)がコロナ禍の影響で離職・退職させられたと回答。その18%が現在も休業中で、多くの女性医師に解雇への不安があった。
  • 緊急事態宣言によって保育、学校が休校となり、女性医師が家事育児をしなければならず、離職やキャリアの中断を余儀なくされたケースが相当数認められた。
  • 経営難となった病院に解雇された、給料減額などによって自ら離職したケースもある。
  • 循環器診療の縮小化、患者の受診控え、コロナ診療への循環器医師派遣などで、医学生や若手循環器医師がトレーニング経験を積む機会が激減した。
  • 専門医試験の中止、学会延期により、モチベーションの維持が困難となり、充実した海外留学の道も絶たれつつある。
  • コロナ以前から若手医師、特に女性医師に抑うつ傾向、高い自殺率が指摘されていたが、パンデミック以降、急増している。
  • 妊娠中の女性医師の感染重症化リスクを懸念した各国が指針を出している中、日本では努力目標にとどまっている。

さて、いかがでしょうか。昨年7月、東京女子医科大でボーナス不支給により看護師が400名も退職することが大きく報じられました。その後、ボーナスを支給する方向に転じたことで大量退職は回避されたとのことですが、看護師だけではなく、女性医師も厳しい状況に追い込まれていることが、件のレポートからお分かりいただけると思います。

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