それでも、電通の経営は安泰とはいえない。電通グループは20年12月期、過去最大1,595億円の赤字を出した。コロナ禍で企業の広告出稿が激減し、テレビや新聞の業績が悪化したのが響いたのだ。本社ビル売却で穴埋めするようだが、このうえ東京五輪が中止になって、見込んでいた収益が吹っ飛んだら大変な事態に陥るところだった。無観客でも開催できただけ、マシだろう。
探査報道に特化したジャーナリズム組織「Tansa」が入手した資料によると、今年6月30日、大会組織委員会とパートナー(スポンサー)企業との会議が、非公開で開かれたさい、電通出身の坂牧政彦・組織委マーケティング局長は以下のように五輪開催の意義を強調したという。
「日本でなければ、とっくの昔に中止になっていたと思います…やはりここでやめるのはもったいないです」「(五輪を開催することで)日本という国の評価、東京という街の評価を世界に示していけるのかなと。それがコロナ後の新しい社会の中での東京・日本の価値を高めていくと信じています」
電通としては、組織委員会や政府、そしてスポンサー企業の尻をたたき、ようやくこぎつけた東京五輪開会式だった。いまや、テレビ各局は、高い放映権料の元を取ろうと、どのチャンネルも五輪中継ばかりで、人々の関心を、メダル獲得ラッシュにひきつけている。
新型コロナの新規感染者がこれまでで最多となり、デルタ株の脅威が一段と高まるなか、電通のメディア支配はとどまるところを知らない。
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