京大教授が嘆く、ワクチンと死亡者数の関係を「数字」で理解できない人々

 

以上の議論で一番難しいかも知れない…と当方が危惧したのは、

「重症者の中で死ぬ人の割合」

の議論です。このグラフを見て、「なるほど、確かに重症者が増えてるのに(暫く時間が経っても)死者が増えてないってことは、『重症者の中で死ぬ人の割合』が減ってるってことだな」と理解することができる人はできますが、出来ない人は出来ないかも知れないと…懸念致しました。

世の中には文系、理系という区分もありますし、算数が苦手だ、と言う方もたくさんおられます。そして、そんな算数の苦手な方の中には、

「割り算」

でつまずいてしまい、生涯つまずいたままの方もおられるのです。

あるいは、それ以前に(今調べてスグには見つからなかったのですが)グラフが実は全く、あるいは殆ど読めない、という種類の日本人は,全日本人の内の2~3割程度はおられるのです。

ですから、そういう方は、以上の議論については殆ど理解できなかったのかも…しれません。

例えば当方の知り合いで、文系的知能に関しては、完全に当方が知る中でもずば抜けて優秀で、「天才」といっても過言ではない方がいたのですが、その方は、びっくりするくらいに数学、というより「算数」が出来なかったのです。

彼は、XYのグラフから、意味を読みとることが著しく苦手、というか、全くできないようでした。

これだけ頭がいいのに、なぜこんな簡単な算数やグラフの説明が分からないのだろう…と当方は心底不思議だったのですが、今はもう、世の中には、そういうタイプの人間もいるんだという風に、自分の中で整理して理解しています。

ですから、おそらくその人物に上記の推論をお見せしても、結局全く理解しないのであろうと…思います。

では、その「彼」は一体何で物事を理解しているのかというと、「全て言葉」を通して物事を認識しているのです。

言うまでも無く、我々は子供の頃に言葉が使える様になって以降、一人残らず物事を理解する時に「言葉」を使って認識しています。

データを使って認識したり説明したりすることが仮に苦手な方がおられても、「言葉」については最低限の理解能力があるのが、人間という存在です。

だから当方は、あらゆる言論の中で、データをどれだけ使う時も、データが全く理解されなくても、その言葉だけで話の筋が通るように説明することを心がけています。例えば、上記のデータを用いた解説については次の様にまとめて「言葉」で説明することができます。

「ワクチンを打っていない時は、重症者の中からそれなりに死者がでていました。でも多くの人々がワクチンを打った今、重症者がどんどん増えてるのに、死ぬ人は殆ど増えなくなっています。

これはつまり、皆がワクチンを打ったから、重症になっても、死ななくて済んだ、っていう方が一杯増えている事を意味しています」

この「言葉」には、「増える」とか「殆ど増えなくなっている」という、データ的な話がいくつか入っていますが、「グラフで右肩上がりです」と言っても分からない「数字で考えられない人」でも、「増える」という言葉の意味は分かると思います。

なぜなら、増えるというのは、経験できる現象だからです(つまり、誰でも体重が増えてきた、とか、友だちが増えてきた、ということを実体験として誰でお経験できるでしょう)。

ただし、「数字で考えられない人」は、

東京都の重症者数と死者数の推移(7日間移動平均)

というグラフと、以下の日本語

「ワクチンを打っていない時は、重症者の中からそれなりに死者がでていました。でも多くの人々がワクチンを打った今、重症者がどんどん増えてるのに、死ぬ人は殆ど増えなくなっています。

これはつまり、皆がワクチンを打ったから、重症になっても、死ななくて済んだ、っていう方が一杯増えている事を意味しています」

との間の対応関係を読み解く事が「できない」のです。

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京都大学大学院・工学研究科・都市社会工学専攻教授、京都大学レジリエンス実践ユニット長。1968年生。京都大学卒業後、スウェーデンイエテボリ大学心理学科客員研究員,東京工業大学教授等を経て現職。2012年から2018年まで内閣官房参与。専門は、国土計画・経済政策等の公共政策論.文部科学大臣表彰、日本学術振興会賞等、受賞多数。著書「プライマリーバランス亡国論」「国土学」「凡庸という悪魔」「大衆社会の処方箋」等多数。テレビ、新聞、雑誌等で言論・執筆活動を展開。MXテレビ「東京ホンマもん教室」、朝日放送「正義のミカタ」、関西テレビ「報道ランナー」、KBS京都「藤井聡のあるがままラジオ」等のレギュラー解説者。2018年より表現者クライテリオン編集長。

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【著者】 藤井聡 【月額】 ¥880/月(税込) 【発行周期】 毎週 土曜日

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