技術力偏重時代は終わった。国内の縫製工場よ、「メーカー」になれ

 

3.ODMはサンプルを提示する

ODMメーカーになると、小売店と取引が可能になる。アパレル卸に納品するより、利益率は高くなる。

その代わり、自社が企画機能を持ち、得意先にサンプルを提示しなければならない。言われた通りに縫製する商売から、売れる商品を提案する商売への転換である。

「売れる商品とは何か」と考えることで、トレンド情報や店頭情報の収集や分析を意識するようになる。縫製加工業であれば、何が売れるかを考える必要もないし、トレンドを意識することもない。

ODMメーカーとして実績を積むことは、何が売れるかを把握することである。ここまで来れば、「ファクトリーブランド」を売り出すことを考えるだろう。

ODMメーカーはサンプルを提案するが、基本的には工場である。工場の利益は設備の稼働率と人員の効率によって生み出される。工場を回すためにサンプル提案をしているのだ。サンプルを提案するための企画の経費は掛かるが、商品の在庫リスクを持つことはない。

ファクトリーブランドとは、あくまで本業は縫製業であり、売上の一部をファクトリーブランドで稼ぐという発想である。

大きな工場になるほど、その設備を全て自社ブランドで埋めることは不可能に近い。

アパレルメーカーは、利益率は高いが、商品が売れなければ在庫を抱え、損失が生じる。アパレルメーカーとして自社工場の稼働率を上げることを優先すれば、間違いなく在庫過多に陥り倒産してしまうだろう。もし、アパレルメーカーとして生きていくならば、自社工場を縮小し、生産量の変動を吸収するためにも、外部工場とも取引することになるはずだ。

4.業態により企画の方向性は異なる

ODMメーカーが提案するサンプルの品揃えは、ある程度の幅を持つ必要がある。得意先に幅があるからだ。ヤングを顧客に持つアパレルであっても、微妙に顧客層は異なるし、ブランドのテイストも異なる。フォーマルな服を求めるブランドもあれば、カジュアルな服を求めるブランドもある。幅広い顧客に対応しなければ、縫製設備をフル稼動することはできない。

一方、自社ブランドの商品を企画生産し、販売するアパレルメーカーになると、より商品の幅を絞り込み、他者との差別化を図ることが求められる。

商品企画をしてサンプルを作成することに変わりはないが、ODMメーカーが作るサンプルと、ファクトリーブランドが作るサンプルは異なるのである。

更に、自社工場と切り離されたアパレルメーカーでは、ファクトリーブランドのように、自社工場で生産できる商品を構成するという制約もなくなる。自社工場を持たないアパレルメーカーは、シーズンによって自由にアイテム構成を変更することができるのだ。

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