技術力偏重時代は終わった。国内の縫製工場よ、「メーカー」になれ

 

5.価格競争からブランド競争へ

縫製工場が、アパレルメーカーへの変革を考えるのは、人件費の高い先進国に存在しており、価格競争力がないからである。

現在、アパレル企業の主流は小売店である。小売店がブランドを開発し、世界中のメーカーから商品を調達している。グローバルSPAと呼ばれる大型アパレル小売業は、人件費の低い国で生産し、人件費の高い国で販売している。人件費の高い先進国の縫製工場から調達することはほとんどない。

人件費の高い工場は価格競争力はない。勝負するのは、品質であり、デザインであり、ブランドである。大量生産ではなく、少量生産。数千人単位の大規模工場ではなく、10人単位の小規模な工場が基本になる。

先進国の工場の強みは、高額な商品を購入できる顧客が近くに存在していることだ。そして、顧客とコミュニケーションを取ることもできる。

その強みを活かし、付加価値の高いビジネスをするには、OEMメーカーではなく、ODMメーカーになる必要があるし、更には、自社の強みを活かしたファクトリーブランドを展開すべきである。

これを実現するには、価格訴求ではない、独自の魅力を直接顧客に届けなければならない。魅力は技術だけではないし、商品だけでもない。人の魅力も含まれる。素材の魅力も含まれる。情報発信の魅力も含まれる。全ての魅力が複合して初めて、ブランドの魅力になる。ブランドが確立してこそ、人件費の高い先進国の製造業が成立するのである。

編集後記「締めの都々逸」

「モノを作って 儲けた時代 今は昔と また作る」

国内縫製工場の自立とは何でしょう。縫製加工に専念したから、高度な技術が発達したとも言えます。しかし、仕事を出してくれるアパレルがいなくなれば、縫製工場も淘汰されます。

アパレルがなくなっても、生きていくには自立が必要です。ただし、そうなると、技術をだけを磨いているわけにはいきません。これまで関係がないと思っていた分野の仕事もしなければなりません。

それを選ぶか否かは自分で決めるしかありませんが、もし、自立しようという縫製工場がいるなら、手伝えることもあるかもしれないと思っています。

でも、難しいですよね。今回は、その難しさを整理したつもりです。(坂口昌章)

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image by: Shutterstock.com

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