ご遺族が記者会見で示した3つのこと
もちろん、9月13日の記者会見では「1人1台」端末のことに言及している。
それはそうだ。そもそも小学生の子を持つ親の中には、「ネットの世界などはまだ早い」という観点や、専用の端末を持たせてしまうと家庭の管理の上で制御が難しくなるなどの考えから、「端末を持たせない」という方針の家庭もあれば、専用端末ではなく親が使っていた古い端末を家庭内のwifi環境でのみ使わせているという家庭もある。
一方、学校の授業中にそのチャット機能を小窓で開いていじめが行われたら、保護者の管理が行き届くわけもないのである。
では、ご遺族は何を要望したのか、正確に記したい。
- いじめ防止対策推進法、「いじめの防止等のための基本的な方針」及び「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」に適正に則った対応と、それを担保するための設置要項を策定すること。
- 常設の調査委員会ではなく、本件に関する新設の第三者委員会の設置による徹底した調査を実施すること。
- 端末を使用する学校におけるいじめ防止対策を再点検し、徹底すること。
3つのことをまとめて簡単に言えば、国の法律とそれに基づいて作られたガイドラインを守り、正しく対応してください、ということだ。
このシンプルなことができていなかったから、結果、ご遺族は文科省にまで出向かざるを得なくなったのである。
懇切丁寧に対応したというが、面会はわずか1回
9月13日の文科省記者クラブでの記者会見から、本件は大変なニュースになった。翌日は萩生田文科大臣への質問が相次ぎコメントも出たし、文科省が町田市教委を呼び、そこに東京都教育庁の担当者も同席して、ご遺族に寄り添うようにという指導があったとニュースにもなっていた(地方の方は、町田市を神奈川県だと思っている人もいるようなので、町田市は東京都であることを確認しておく)。
一方9月17日、町田市では、文教社会常任委員会が開かれ、当然に、この問題は1つの議題として町田市教委が報告を行うことになった。
町田市はこうした委員会をネット中継しているので、私も同日、この委員会の様子を見たが、 担当の指導室長が口癖のように「遺族の意向に従った」「繰り返し丁寧に説明している」と発言していた。
私は立場上、この様子はあまりに良く知っているので詳細な言及は控えるが、まず、教育委員会の担当者はご遺族の家を訪問したことはない。この委員会で主に議員らに回答していた指導室長という人は1度も会ったことがない。これは教育センター長も同じである。
教育委員会の窓口の課長らとご遺族が会ったのは、 いま現在まで1度きりであり、それも、ご遺族の代理人弁護士が再三に渡って面会を申し出てやっと実現したことであった。
私は変わり者だとよく言われるが、そんな私でも、たった1回部下が会っただけ、自分は一度も会ってないという対応で、「丁寧な説明」などというだろうか。「繰り返し」というが、そこまで強調するほどのやり取りもないだろう。
私はかなり多くのご遺族の支援をしてきたが、正直、 ここまで無対応、無回答の教育委員会は見たことがない。
1つエピソードを記すが、町田市教委の担当窓口の面々とご遺族(両親)代理人弁護士、私で面会し終わった際のことだ。ご遺族が、亡くなった娘さんがお世話になったことがある先生を見掛けた。そこで、「生前お世話になった方なので、ぜひとも挨拶がしたい」と願い出た。
確かに椅子に座ってデスクに向かって仕事をしているのは私からも確認できた。
しかし、その回答は、
「いま席を外しています」
であったのだ。
目の前にいるのに、「居ない」と、平然と居留守をつかわれたわけだ。
当然その場で抗議となるわけだが、ご遺族が生前お世話になった先生だから挨拶をしたいというだけで、この対応だったのである。
きっと町田市教育委員会では、こういう対応が「懇切丁寧な対応」なのだろう。
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