町田市小6女児いじめ自殺を調査する探偵が明かした、市教委の非情な「居留守」「出禁」「無回答」

 

根本的な問題

ご遺族の主張はシンプルなのだ。

「法の理念に則った新設の第三者委員会をちゃんとやってください」

これに尽きるのだ。

どうしても本件はいじめの道具に学校配布の端末が使われてたことで、GIGAスクール構想推進派と反対派が空中戦を繰り広げるところが目立つが、親として「何があったか知りたい」というのは当然の思いなのだ。

もちろん独自の調査はしているし、ほぼ確実だろうという状況証拠もあるが、公として認められたり、より深いものに関しては、第三者委員会の力が必要になってくる。

町田市にはいじめ条例があり、そこには「常設の調査委員会」についても条例に定められている。

これはいじめ防止対策推進法第14条3項を根拠としており、「教育委員会の附属機関としての委員会」設置を指す。

もちろん、この附属委員会は、生命の危機などに関する重大事態のいじめに対して調査をすることができるとされている。

だから、多くの教育現場では、この委員会を第三者委員会として運用するのだが、ガイドラインを無視して運用していることがあり、遺族や被害者と大きく溝ができるケースが相次いでいるのだ。

町田市の場合、上に書いた通り、 *注対策委員会(調査委員会)について事前の話し合いなどは持たれたことがまったくない。

注:町田市長は9月22日の記者会見で現附属委員会を対策委員会、市長が設置する委員会を調査委員会であることに相当なこだわりがあったようだが、14条委員会と30条委員会という認識の区別で十分であり、これは各自治体の呼び方に過ぎないとして、現在の第三者委員会については、「調査委員会」と言います。また、どちらの委員会設置についても、ご遺族や被害者については人選から合意を得ていく必要があります。

本来は、調査委員会についての説明はしなければならない、とされている。これは、いじめ防止対策推進法を守っていくために作られた「いじめ重大事態の調査に関するガイドライン」の先頭、第1「学校の設置者及び学校の基本姿勢」に図入りで説明されている。

それによれば、

「調査を開始する前に、被害者・保護者に対して丁寧に説明を行うことで、被害者等の意向を踏まえた調査が行われることを担保」

とあり、説明事項として、

  1. 調査の目的、目標
  2. 調査主体(組織の構成、人選)
  3. 調査時期・期間(スケジュール、定期報告)
  4. 調査事項、調査対象
  5. 調査方法
  6. 調査結果の提供

とある。

つまり、どのような委員会でどのような委員が選任されており、その一人一人の専門性を含め、中立公平な調査ができるということをきちんと説明しなければならないというわけだ。

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ところが、 こうした説明は何もなく、調査委員会の第1回開催前日に、ただ委員の名前と職業が書かれたFAXが1枚届いたに過ぎないのである。

こうした 任期のある常設の委員会 において、最も恐ろしいのは、いじめはどの地域でも無数に起きていて、重大事態とされる事案は複数起きているから、 固定された委員であると、被害者や加害者、放置した教職員などの委員の間に、もともと利害関係があったり、関係性が認められるケースもあるということだ。

事実として、 本件では、ご遺族側の調べで、委員に当事者との関係性が疑われる人物が認められ、代理人弁護士から委員から外すように要請がされているのだ。

こうした町田市側の失態は、そもそもガイドライン通りに委員の人選の説明からしっかりと、「丁寧な説明」をしていれば防げた話である。

いじめ防止対策推進法についての答弁でも、第三者委員会に中立公平の視点は「ご遺族・被害者側から見て」であることは明らかにされているから、説明をしないで勝手に進めしまうことは、あってはならないことなのだ。

さらに、こうした委員会で重要なのは、独立性だ。

そもそも法律で教育委員会(学校の設置者)の附属機関が認められているから、一般から見れば身も蓋もないところはあるが、 法と権利の番人である弁護士も多く関わることから、独立性が保たれる委員会も多くある。

ただし、その場合は、 ほぼ必ず独立性を確保するための「設置要綱」が存在している。

簡単に言えば、第三者委員会の決まりごとがあるということだ。

委員会の設置となれば委員の報酬などもあろうから、必ず予算がなければならない。実際、この報酬も小僧の小遣いレベルで、仕事量も責任も各委員の心を簡単に砕くほど重いという根本問題がある。 また、どこでやるのかという場所の問題もあるだろう。

結局そうしたところは、設置権限が認められた学校や、学校の設置者である教育委員会や、私立であれば学校法人などが持つということになる。

一般的にこの段階で報酬はそうしたところから支払われるわけだから、一定の利害関係はあるともみえるが、設置要綱などで独立性を担保することで、中立公平性を保つわけだ。

しかし、 本件でわかったことは、

このような設置要綱は町田市にはない

ということだ。

つまり、 中立公平性の柱がないのだ。

町田市教育委員会のこれまでの主張から、信頼すべき根拠を見出そうとしても、無い無い状態であった。それこそ、 独立性のある行政機関は公の存在であるから信じろ、こうした背景のみが彼らの行動規範になっているとしか言えないということは残念である。

町田市の市長が「新設の第三者委員会を設ける」というが

2021年9月22日、町田市の石阪丈一市長は記者会見を開き、「新設の第三者委員会を設置する」と明言した。しかし、第一報の報道では、これまでの町田市教育委員会の説明と変わりはない。

報道によれば、「弁護士や学識経験者などで構成する調査委員会を立ち上げ、遺族の意向に配慮しながら対応する」と言っている。一見、良い対応をしたと思えるかもしれないが、 全く違うのだ。

そもそも 第三者委員会を新設するということは、その委員会の人選からしっかりご遺族と話し合いをもっていかなければならないのだ。そして、ご遺族側はとってもわかりやすい文面で、何度もこれを求めているのである。

石阪市長の発言は、はじめからやり直しに見せ掛けただけで、出来上がったところからの調整に過ぎないのである。よもや、町田市教委からしか教えてもらっていないのか、きっとそんな馬鹿なことはないと思いたいし、「今回はちょっと説明が足りなかった」と言うことを期待したい。

ちなみに、この件について、私は町田市教育委員会にFAXで質問した。

予想はしていたが、「お答えできない」そうだ。

そして、もう1つ。

2020年9月にいじめが発覚、11月30日に被害者が自死してから、2021年9月22日現在まで、教育委員会担当者は1回しか面会をしていない。本当の責任者であろう指導課の室長は一度も会ったこともない(ここで面談と書かないのは、まともな意見交換をする対応ではなかったから)。 そして、9月13日の記者会見から、町田市教育委員会側がご遺族側に連絡したことは一度もないのである。ちなみに、ご遺族側からは、しっかり通知などはしている。

こうしたことからして、本当に町田市も市教育委員会も何をもって「配慮する」という言葉になるのか理解できない。

1つ町田市教育委員会にアドバイスするとすれば、本件はICT教育に関わる問題であり、パスワードなどの管理の杜撰さがすでに指摘されている。そうした面から、調査の専門性を保つのであれば、デジタル・フォレンジック(デジタルデバイスに記録された情報の回収と分析調査を行うこと)などの専門家がいなければ、適正だと普通は言えない。

それから、何か「組織的な病気」でも患っているだろうか、普通の担当者は代理人弁護士に1本でも電話くらいはするものだ。なぜなら、それが仕事だからだ。意向を踏まえるならば、きちんと話を聞かなければ始まりようもない。

最後に

萩生田文科大臣は文科省に指示し、文部科学省初等中等教育局児童生徒課が、各教育委員会などの担当課に2021年9月21日、いじめ防止対策推進法等に基づくいじめに関する対応についてと題して通達を行っている。

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この 通達 には 「ガイドラインに沿って対応に当たることが求められます」と明記してあり、そのガイドラインがイラスト付きで記載されている。

そしてここにも、私が本メルマガで書いたような、ご遺族や被害者に寄り添った対応についても、イラスト付きできちんと載っている。

多くのいじめ第三者委員会にまつわる問題は、教育委員会などがご遺族や被害者に寄り添った、人として当然の対応を全くしていないことや、隠ぺいと言っても過言はない行為をしているからである。

国に関しては「こども庁」の論議もあるとは思うが、たびたび根本問題になる「いじめ防止対策推進法の改正」にもぜひとも着手してもらいたいものだ。

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