その一方で、トヨタは好業績により会社内にひたすら利益をため込んでいます。トヨタの利益剰余金は、2005年から現在までの間に倍以上に膨らんでいるのです。利益剰余金というのは、利益から税金、配当などを差し引いたものです。内部留保金とほぼ同異義語です。
2005年から現在までにはリーマンショックや東日本大震災などがありました。にもかかわらずトヨタはこの間に利益剰余金を倍増させているのです。トヨタクラスの世界的な企業でこの10数年で利益剰余金を倍増させているような企業はほとんど見当たりません。昨今「日本企業は内部留保金が多すぎる」ということがよくいわれますが、その象徴的な企業がトヨタだといえるのです。
トヨタの内部留保金推移
2005年3月期 9兆3千億円
2010年3月期 11兆6千億円
2015年3月期 15兆6千億円
2020年3月期 22兆2千億円
そして日本中の企業が人件費を削減した
トヨタが賃金を抑制するようになったことは、日本経済に大きな影響を与えました。ご存知のようにトヨタは日本最大の企業です。トヨタの賃金政策は、そのまま全国の日本企業に波及します。「トヨタがベースアップしないなら、うちもベースアップしなくていい」ということになったのです。
特に、史上最高収益を出した2004年前後でさえ、ベースアップをしなかったということは、労働界に大きな衝撃を与えました。トヨタのような好業績の企業でさえ、ベースアップしなかったということは、業績がそれほどよくない企業は、まったくベースアップをしないし、業績が悪い企業は、大手を振って賃金を下げることになります。
その結果、「先進国の中で日本だけが20年間賃金が上がっていない」ということになったのです。