トヨタは自分で自分の首を絞めている
「企業が従業員の賃金を上げずに社内に金をため込むばかり」それは企業は自分で自分の首を絞める行為でもあります。従業員というのは、企業にとっては顧客でもあるのです。
日本のサラリーマンは、日本国内の消費を支えている人たちです。その彼らの賃金が上がらないということは、消費が増えないということにつながります。実際、日本の消費は下がりっぱなしです。消費が減るということは、企業にとっては市場が小さくなるということであり、物やサービスが売れなくなることになります。長い目で見ると大きなダメージとなるのです。
たとえば、トヨタなどもそのダメージがじわじわと表れています。トヨタの車の国内販売は、バブル期に比べれば、急激に下落しています。最高時には216万台でしたが、バブル崩壊以降年々減り続け平成23(2011)年に至っては、107万台にまで落ち込んでいます。現在は150万台前後です。
最高で216万台だったのが、150万台前後にまで落ち込む、というのは、相当なものです。約30%もの落ち込みです。しかも、トヨタは国内市場のシェアを拡大しているにもかかわらず、台数がこれほど減っているのです。つまり、国内の自動車市場がいかに急激に小さくなってしまったとかいうことです。
昨今、若者の自動車離れが言われていますが、これは趣味趣向の変化だけではなく、若者の収入減が大きな原因だと思われます。かつてトヨタの工場では従業員の多くはトヨタの車に乗って出勤していました。が、現在はそういう光景はあまり見られません。非正規雇用の従業員には、トヨタの新車を買うのは非常に難しいのです。
トヨタは現在、世界中に車を売ることで莫大な利益をあげています。しかし国内での販売は相変わらず、トヨタの収益率には大きく貢献しており、トヨタのアキレス腱ともいえます。
世界でモノを売るということは国内でモノを売ることよりも難しいものです。世界ではいろんな規制がありますし、特に自動車産業などはどこの国も自国の企業を守りたいものです。現在トヨタは、アメリカを最大の顧客にしていますが、アメリカではしばしば日本車が貿易摩擦の元凶とされ、トヨタも法外な罰金を払わされるようなことが多々あります。
トヨタにとっても、まず国内でしっかり稼ぐということは重要なことのはずです。国内で稼いでおかないと、世界で競争力のある製品をつくることはなかなかできません。トヨタが世界的な企業になれたのも、高度成長期からバブル期にかけて国内でしっかり稼ぐことができたからなのです。
そのためには、日本国内市場を枯らせてはならないし、払うべき賃金はきちんと払っておかないと、これから日本経済はどんどん厳しい状況になってしまうし、企業自身も廃れてしまう、ということです。
(※本記事は有料メルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』の2021年10月1日号の一部抜粋です。全文をお読みになりたい方は、初月無料のお試し購読をどうぞ)
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