ところが、そこで引っ込まないのが中国らしいところです。そのあと1979年1月1日までの21年間、毎週月・水・金の3日間、決まった時間に砲撃を続けることになったのです。合計47万発と言われる砲弾も実弾ばかりでなく宣伝ビラを詰めたものが撃ち込まれました。
1979年、米中国交樹立によって21年間続いた砲撃は終わりましたが、このように中国のやり方は計算ずくで執拗なものなのです。
実を言えば、台湾の防空識別圏への中国機の侵入も南西側をかすめる形に限られています。台湾東海岸に回り込んでの攻撃能力を示したり、台湾海峡を通る米国艦船への牽制を試みたりしているという見方はできますが、中国が内外に軍事的プレゼンスを示す一方、台湾、すなわち米国との軍事的衝突は絶対に避けたいという姿勢の表れだということがわかります。
だからこそ、根負けしないように空騒ぎを避け、日米と台湾で防衛力整備を着実に進めて、取り付く島もないと中国に思わせるような取り組みを続けることが必要になってきます。
また、いくら中国に武力攻撃の兆候がないといっても油断は禁物です。砲撃が行われていた時代に比べると金門・馬祖両島の防備は手薄になっています。その隙に乗じて占領しようと思えば、公開された映像のレベルの部隊でも可能かも知れません。両島を奪取されれば、台湾国民が受ける精神的なダメージは計り知れないものとなり、独立への気運に暗雲が垂れ込めることになるかも知れません。
頃合いの案配、さじ加減が必要な中台の問題、金門・馬祖の歴史的な経緯に学びつつ、中国の軍事的動向を注視しなければならないと思います。(小川和久)
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