渋沢栄一が重視したのは“結果平等”ではなく「機会平等」。 子孫が語る新しい日本型資本主義に通じることとは

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異例の短期決戦となる選挙戦がスタートし、各党がさまざまな公約を掲げています。自民党の岸田文雄総裁は「新しい資本主義実現会議」を設置しましたが、渋沢栄一の子孫で、世界の金融の舞台で活躍する渋澤健さんもそのメンバーとして参加。岸田氏が訴える「成長と分配」を渋澤さんはどう考えているのでしょうか。

プロフィール:渋澤 健(しぶさわ・けん)
国際関係の財団法人から米国でMBAを得て金融業界へ転身。外資系金融機関で日本国債や為替オプションのディーリング、株式デリバティブのセールズ業務に携わり、米大手ヘッジファンドの日本代表を務める。2001年に独立。2007年にコモンズ(株)を設立し、2008年にコモンズ投信会長に着任。日本の資本主義の父・渋沢栄一5代目子孫。

渋沢栄一、最大の功績は「未来へのストックづくり」

謹啓 ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。

コロナ禍により経済社会のこれまでの常識の多くが「破壊」され、日本の人口動態の激変による新たな時代への門が開きつつある中、新たな自民党総裁および総理大臣が決まり、自民党幹部と内閣の陣容も刷新されました。新首相の調整・調和力で地盤が固められ、新しい時代への突破力が発揮されることを期待しております。

岸田総理は「新しい日本型資本主義」を国家ビジョンとして掲げられております。6月中旬に「新たな資本主義を創る議員連盟」を会長として立ち上げられ、そのキックオフ会合に私が講師として招かれましたので、総理は渋沢栄一の『論語と算盤』にご関心があると推察いたします。

本議連のサブタイトルが「すべての人が成長を実感できる一体感ある国へ」でありましたので、現在の社会課題である格差の是正を念頭に置かれている一方、成長を度外視していないことも明らかです。

現に「成長と分配の好循環」の経済政策を表明されています。『論語』が「分配」、『算盤』が「成長」と解釈しても良いかもしれません。

もちろん渋沢栄一の時代と現在は状況が異なります。しかし温故知新という観点で『論語と算盤』は「新しい日本型資本主義」の参考となる側面がありそうです。

まず、新しい時代を拓くためには、栄一は王道を歩むべきだと提唱するでしょう。

「もしそれ富豪も貧民も王道をもって立ち、王道はすなわち人間行為の定規であるという考をもって世に処すならば、百の法文、千の規則あるよりも遥かに勝った事と思う。」(注:『論語と算盤』はただ王道あるのみ)

「定規」とは線を描くときに用いる道具です。要は、真っすぐ進む規範という意味が含まれているのでしょう。そういう意味で、法律や規則を万能薬ととらえるべきではないと栄一は主張しています。

人間一人ひとりが王道を真っすぐ進むこと。これが、何より大事なことであると。

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