渋沢栄一が重視したのは“結果平等”ではなく「機会平等」。 子孫が語る新しい日本型資本主義に通じることとは

 

それでは、新政権による「成長と分配の好循環」の目玉となり得る新しい政策は何でしょうか。

私は、6月の本レターでご提案した、日銀ETFの現物株化による新たな基金設置を是非検討いただきたいと考えております。

日本の財政の計り知れないロングテール・リスクを抱えるリスクアセットを日本の中央銀行のバランスシートから外し、企業の成長によって生じる配当金を社会へ分配する財源として活用、大学の技術研究教育などに充てることで、現世代の使い切りではなく、次世代の豊かな生活への長期的な「ストック」づくりに取り組むことが肝要です。

渋沢栄一がつくった500の会社、600の社会的事業は、まさに未来への「ストック」づくりでありました。

「成長と分配の好循環」を促す新たな「日本型資本主義のストック」づくりを促す政策を、是非とも新政権に取り組んでいただきと考えております。

□ ■ 付録:「渋沢栄一の『論語と算盤』を今、考える」■ □

『論語と算盤』経営塾オンライン 

「論語と算盤」ただ王道あるのみ

要するに富むものがあるから
貧者が出るというような論旨の下に、
世人がこぞって富者を排擠するならば、
いかにして富国強兵に実を挙ぐることが出来ようぞ。
個人の富はすなわち国家の富である。

新しい政権の誕生により、「高所得者」への増税の観測が浮上しています。高所得者は社会に対し責任があると栄一は唱えていました。ただ、所得を高めることが罰されるような国の富みが向上することはないと強く主張しています。特に現代日本の場合、「高所得」の水準が欧米と比べると低すぎます。税改正で特に大事なことは30代~50代という現役世代・子育て世代への税負担が高まらないことであると痛感します。社会の多数に高所得を促す税制度の工夫が、「成長と分配が好循環」している社会でありましょう。

「渋沢栄一 訓言集」・国家と社会

経済に国境なし。
いずれの方面においても、
わが智恵と勉強とをもって
進むことを主義としなければならない。
しかし道理に叶ったことでなければ、
国内でもよろしくない。国際間でもよろしくない。

国内で環境破壊、格差や人権問題に取り組むのであれば、これらの問題を企業の成長の名目で国外、特に途上国・新興国に押し付けないグローバル・サプライチェーンを構築するのは、日本企業の責任であり王道です。「新しい日本型資本主義」の令和の成功体験はMade With Japanを目指すべきです。多くの国々の多くの人々の豊かな生活と持続可能な社会を支えることが、日本の繁栄へとつながります。

謹白

image by: 公益財団法人渋沢栄一記念財団 - Home | Facebook

渋澤 健(しぶさわ・けん)

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