「会社で働き詰めは嫌」という人間にフリーランスは務まるのか?

 

久米さんからの回答

ほどほどに会社で働きつつ、空き時間にちょっぴりフリーランスがよろしいのでは?

まず最初に申し上げたいのは、「出世欲」が無いことは、決して特別なことでも、悪い事でもないということです。

日本の多くの企業では、出世した結果どうなるかというと、管理職になるケースがほとんどです。たしかに給料は上がるかもしれませんが、非組合員になって残業手当も出なくなりますし、日本的で冗長な会議の数々への出席も求められます(中には一日中何かの会議ということも=実質仕事可能時間が減る=残業が増える)。また自分の成績のみならず部下を含む業務目標が与えられ管理や評価が必要になります。

こうした細々としたマネジメントが好きで、やりがいを感じるなら良いのですが、現場の仕事が好きな人、実際に取引先やお客様と会うのが好きな人には苦痛かもしれません。

例えば、かつて、リクルートで数々の新規事業を立ち上げ三羽ガラスとまで言われた藤原和博さんは、こうした会議、業績管理、部下の評価などに忙殺されるマネジメント職はやりたくないと、会社を飛び出したのです。

「提案だけでは何も起こらない」 リクルートを退社し、中学校の校長となった藤原和博氏

ましてや、今は管理職になった瞬間に、パワハラ研修を受けさせられ、かつて自分たちが上司にされてきた方法を、ほとんど否定されてしまいます。いわゆる体育会的根性論や強い言葉での叱咤激励でもしようものなら、たちまち若手社員は会社に出てこなくなるか、どこかに訴えるでしょう。

ですから、もしも今の現場の仕事が面白く、そこそこの成績で会社に貢献できているのであれば、ずっと現場の専門職を究めていく道もあるのです。海外では、管理職になりたくない技術専門職の優秀な人向けに、フェローという仕組みがありますが、日本でもフェロー制度のある会社が出てきています。しかし、フェローまでならなくとも、日本の会社では、不祥事などでも起こさない限り、ちゃんと仕事をしている人を一方的に辞めさせることはできません(だからこそ、閑職に追いやり、精神的においつめて、自発的にやめさせるという、半沢直樹的ワールドがあるわけです)。

経営者になればわかるのですが、米国などに比べて、日本は働く人の権利がかなり守られています。終身雇用がよしとされたわが国では、原則として、会社都合で一方的に誰か社員を指名して辞めさせることは難しい仕組みになっています。また経営者にも、社員にやめてもらうのは最後の手段と思っている人が多いのです。先日も、コロナ禍で経営危機に苦しむ、あるホテルの支配人とお話した時に、「それでも社員は守る。申し訳ないが、社員のみなさんには一時的に社外に派遣や出向してもらいながらも雇用は守る」と話されていて感激しました。

もし社員を減らさないと会社が立ち行かない時には、先日、EVや新規事業シフトを急ぐホンダが行ったような公募制の早期退職制度が行われるのです。ただし、昔は、早期退職制度には、外でも活躍できる優秀な人から申し込んで会社に痛手を与えたようですが、最近は「妖精?」と呼ばれる存在感の薄い人が申し込むそうですが。

早期退職制度に2,000人が殺到したホンダの舞台裏

つまり、日本は、企業経営者にとっては大変でも、社員にとってはやるべきことさえやっていれば安心できる社会なのです。欧米に比べて経営者の報酬は圧倒的に少ないのに安易な解雇やレイオフ(一時帰休)ができないので、出世して経営者になっても、そこまで得なのかと、ふと考えることさえあります。

特にこれからは、DX革命による大失業時代の到来も予測されます。

ですから、私なら、よほど会社の将来性が危ういか、個人的に嫌なことがあるのでなければ、会社にしがみついておく時期だと考えるでしょう。

また、管理職でない組合員であれば、政府の肝いりで休日や残業の規制が厳しくなる中、会社に拘束される時間はどんどん短くなり、自由時間が増えていきます。さらに、副業規定も緩和されつつあるので、会社勤めをしながらフリーランスをする道も開かれつつあります。

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