「会社で働き詰めは嫌」という人間にフリーランスは務まるのか?

 

最後に、フリーランスの話です。私は中小企業経営者として忙殺されながらも、並行して20年以上フリーランスの仕事をしていきました。その経験から、フリーランスの良いところと辛いところをお話しましょう。

まずは、講師業から、私のフリーランス人生が始まりました。構造不況業種の中小企業経営者がネット通販をしているのが珍しいので、全国の商工団体に講師として呼ばれたのがきっかけで、年によって異なりますが、年間、数十回は講師依頼をいただいておりました。特に営業をしているわけではないのですが、クチコミ、ネットコミに加えて、今では「公益財団法人 内外情勢調査会」が全国の支部に声をかけてくださることで、ありがたいことに、ちょっとした副業になっています(といっても平均して月額に直せば、一般的な企業の初任給にもならないでしょう)。合わせて、全国を旅することもできますし、様々な地域のキーパーソン=政治家、官僚、経営者に出会って、ご縁を広げることもできます。

とは言え、経営者や大学教授といった肩書では、芸能人ではなく文化人枠なので、講師料もしれていますし、定期収入になるわけではありません。営業したからといって、仕事が取れるわけでもありません。あくまでも待ち受け型なのです。

そこにコロナウイルスが直撃です。入っていた講演予定は次々にキャンセルされ、毎年恒例の定期的な研修まで中止となりました。

気が付けば、執筆業も20年以上 続けています。まずは、日経情報ストラテジー、経営者会報などのビジネス誌や、日経パソコンなどのコンピュータ雑誌へのコラム連載が舞い込み、多い時は、月10本前後の連載を抱えていました。子育て真っ只中でもあったので、深夜はもちろん、休日のお稽古送迎や公園見守りの合間などに書いていましたが、よくぞ締め切りを守りつつ体を壊さなかったものだと思います。しかし、それだけ書いても、会社員の平均月収に届かせるのは至難の業。しかも、毎回違うテーマを考えなくてはならないですし、連載打ち切りの恐怖とも戦わなくてはなりません。これならどこかの企業に勤めていた方がラクだったと思うこともしばしばでした。今は、日経産業新聞のほぼ月1回連載に落ち着いていますが、それでもネタ探しに頭を使いますし、原稿料は知れていますので、商売にはならないでしょう。

また、2004年の「メール道」に始まり、「すぐやる技術」などの、自己啓発系のビジネス実用書を書く機会に恵まれましたが、これまた大変です。たまたま売れた本もあり、そんな時は増刷の印税で潤いますが、多くの本は初版止まりで、収入は1冊で数十万といったところ。とても本を書く苦労に見合うと思えませんし、これだけで生活が成り立つとは思えません。何が売れるか全くわかりませんし、自分が力作だと思っても評価されないことも多いので、落ち込みます。

続いて、大学講師業も始めました。最初は明治大学の講師となり、続いて多摩大学の客員教授になって、前期は明大、後期は多摩大で、週1コマ教えています。これは、毎月の定期収入になりますし、ありがたいことにコロナ禍でも、オンラインを活用しながら仕事は続きました。しかし、これが驚くほど低報酬なのです。金額は言えませんが、経営者向けの90分講演料より月額報酬の方が少ない上、15回分の教材づくりと採点までしなくてはなりません。名誉なことですし、やりがいはありますが、生活の支えにはならないでしょう。

去年からは、久米繊維の会長職を退いて、iU情報経営イノベーション専門職大学の専任教員になり、こちらでは企業勤め並みの報酬をいただいております。しかし、忙しさや責任は、ほぼ企業のプレイングマネージャー並みなので、これはフリーランスというより会社勤めですね。企業経営者から企業の中間管理職兼専門職に変わった感じです。決して楽な仕事ではありませんし、自分の思い通りにできないストレスはあります。しかし、一方で、給料を払う立場から、給料をもらう立場になるのは、どれだけ気楽か実感しているところです。

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