現実と大きく乖離か。当てにならぬ文科省「問題行動調査」への違和感

 

現場感

いじめの現場にいると常に感じるのは、どんな学校にもいじめはあるということだ。

実際、過去最多となった2019年度の数値の際も、これを発表した文科省は、数が増えたのは、実数に近くなってきているだけで、むしろ良いことだと評価した。

但し、この文科省の言いようだと、まだ実態数には程遠いとも受け取ることができよう。この時期(令和元年発表)1,000人当たりのいじめの発生数は、46.5人である。

1クラスが35人だと仮定すると、絶対に1クラスに1件はいじめがあることになる。

今年の発表を見ても、1,000人当たり39.7件の発生だから、同様に1クラスに1件は必ずあるということになる。

ところが、何クラスもあるはずの学校が、今年の発表ではおよそ21%もの学校が、いじめはなかったと報告をしているのだ。

では、このいじめはなかったとする学校群は、何か特別なことをしているのだろうかと言えば、そんな報告は一切上がってないし、予防教育に詳しい専門家に聞いても、何も見いだせないのだ。

強いて言えば、「発生しているいじめを察知できないほどの能力しかない」もしくは「隠ぺいした」ということだろう。

つまり、全体のおよそ2割は無能か隠蔽かのいずれかだと言っても過言ではない。今はやりの言葉で言えば、公立校の学区制で勝手に振り分けられることを考えれば、学校全体の2割は、「学校ガチャ」の大外れなのだ。

文科省と警察庁の数値があまりに違う

今回の児童生徒の問題行動調査の報告で、注目を浴びたのは、自殺者数だ。

この数は、過去最多とされ、415人の自殺があったと報告された。

しかし、警察庁が発表した若者の自殺者数は、未成年のデータなので、文科省のデータとは基準に差異はあるものの、数が全く異なるのだ。

警察庁、厚生労働省自殺対策推進室警察庁生活安全局生活安全企画、「令和2年中における自殺の状況」より

警察庁、厚生労働省自殺対策推進室警察庁生活安全局生活安全企画、「令和2年中における自殺の状況」より

この数値の差は誤差とは言えないだろう。もはや別物と考えてもいいのではないか。

こうした差については、結局、学校などが挙げた数値を集計しているだけなのでと、文科省はいうだろうが、それでは、「学校がいい加減な数字をあげてくるので」というのと同じだろう。

もはや、こうした文科省の数値は、ちょっと大丈夫なんだろうか?と思えてしまうだろう。

ただ、やはり、この自殺者数の多さは、問題だと思える。今回は令和2年度の分の集計ということもあるから、コロナ禍でなかなか先が見えないということなどで、そもそもの自殺者数は多かった。

10月現在、1日の感染者数が大幅に減って記憶が薄れてきているかもしれないが、確かにコロナの問題は未曽有の感染拡大であった。生活や行動の在り方も変化が求められ、経済的な不安も大いにあった。いわゆる社会不安が子どもたちに影響したという見方は確かにあったといえよう。

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