現実と大きく乖離か。当てにならぬ文科省「問題行動調査」への違和感

 

編集後記

いじめの認知数は、だいたい20万件前後を推移していた時期がありました。ここから、数年で30万件くらい増えたというのが今です。

このあたりの時期、私はある文科省の関係者から聞いた話ですが、いじめが無いと報告してくる地域など、ちゃんと報告していないだろうと思わるところに「ちゃんとやって」という連絡を入れたりしていたそうです。

文中にも書きましたが、過去最多となった昨年の結果でも、文科省はこれを正確な実数とは思えないという趣旨のコメントを出しています。

根本にあるのは、独立性の強い教育行政のあり方で、これは良い面もあれば悪い面もあるということでしょう。教育委員会は独立した行政機関という位置づけですから、基本的に上下関係がありません。つまり、組織の中で「いじめなど無い」という意識が強ければ、「無い」としたところで、特にそれを指摘する機関が無いわけです。

私は日本全国、様々な隠ぺい問題に関わりますが、そうした事実を暴いても、結局アンケートを捨てたり燃やしたり、なくしたことにしたり、データがあるのに無いことにしてしまった不正役人はせいぜい訓戒程度の処分しか受けません。さらに組織としてなぜ起きたのかの調査もしないのが普通です。きっと、深堀りの調査をすれば、都合の悪い偉い人がいるのでしょう。そうした偉い人の権限で各処分が決まるわけですから、訓戒=ちょっと叱られたというくらいなのかもしれませんね。

いじめの被害者やご遺族の多くは、しっかりとした処罰を法的に求める動きがあります。原則私は、これに賛成です。特に隠蔽に関与した者は裁かれて当然のはずです。

ただこれを話すと、必ず2点の批判を受けます。1つは地方公務員法などで処罰の規定があるから処罰が被るということです。では訊きます。学校は公立校だけではなく、私学もあります。さらに国立もありますから、地公法だけの話ではありません。

次の批判は、どこがそれを取り締まるの?ということです。確かに取り締まるような権限を持った機関がありません。作るにしても、そうした機関ができるには法的な背景をしっかり作り、整備する必要があります。ただ、無いということが問題ではなのでしょうか?つまり、これは問題のすり替えです。

他にも教員が委縮するとか、そういう話もありますが、委縮して隠蔽しないなら、結果良いことではないかと思えてなりません。

ちょうど今の時期は衆院選挙ですから政治的な問題に関心が向く時期です。ぜひとも投票は必ずして、身近な問題からも、様々な問題に目を向けてもらえればと思います。

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image by: Ned Snowman / Shutterstock.com

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社会問題を探偵調査を活用して実態解明し、解決する活動を毎月報告。社会問題についての基本的知識やあまり公開されていないデータも公開する。2015まぐまぐ大賞受賞「ギリギリ探偵白書」を発行するT.I.U.総合探偵社代表の阿部泰尚が、いじめ、虐待、非行、違法ビジネス、詐欺、パワハラなどの隠蔽を暴き、実態をレポートする。また、実際に行った解決法やここだけの話をコッソリ公開。
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