現実と大きく乖離か。当てにならぬ文科省「問題行動調査」への違和感

 

もう1つの着目点

文科省の児童生徒の問題行動調査の発表においては、もう1つ指摘された問題があった。それは、インターネットを通じたいじめが急増したということだ。また、不登校が増えたというところも問題として挙げられている。

まず、いじめの現場にいて思うことは、すでにSNSなどはコミュニケーションインフラとして使われているから、話す聞くのと同じように、インターネットはいじめには使われている。ただし、インターネットだけを使ったものとなるとその数は全体の中では極めて少ないと言える。

データでは、パソコンや携帯電話を使ったいじめは、1万8,870件であるとされ、全体のおよそ3.6%程度であるとされている。ただし、この数は過去最多と言える数であった。

これをまるで、児童生徒に1人1台端末を渡すというGIGAスクール構想への批判に使おうとする一定の勢力もあろうが、この批判はあまり馴染まないと言えるだろう。

一方で、90日以上の欠席を長期欠席としているが、この長期欠席の数だけでも、小中でおよそ10万人強、高校に至っては8万人で、合わせるとおよそ18万8,000人になる。

こうした背景は、新型コロナ問題をメインに報じられることが多いが、果たしてそれは事実なのだろうか。例えば、ヤングケアラーやいじめ、現状の教育制度に馴染まなかったり、様々な問題がここには複合的にあると思える。

仮に、日本の教育制度に柔軟性があれば、この数は相当数減らすこともできるだろう。例えば、GIGAスクール構想をするのであれば、インターネットを介して、同様に授業を受けることができるだけでも、それなりの範囲は対応ができるだろう。

そもそも調査とはなにか

こうしたいわゆる白書に近いような調査報告は、単に報告することが目的ではないはずだ。

冒頭にもあるように、あてにならないと思える数値のブレや差などは、結局、報告することのみが目的になっているから起きているのではないだろうか。

そもそも、このようなアンケート集計や統計的調査は、現状を知ってもらうという報告をする側面が省庁として強いというのは理解できるが、その先には、解決したい課題があり、そのために現状を正確に知るために行われるものである。

もしも、真に解決したい課題が文科省や国の教育トップにあるならば、むしろ、このような数値のブレにこそ、問題意識を持つのではないだろうか。

いや、むしろ解決したい課題もないから、こんな数値になっているかもしれないが…。

国にはこうした調査の在り方について、問題意識をしっかり持ってもらいたい。

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