プーチンに狙われている「親日国」を救え。いま日本が“できること”は

 

ハードラインを保つのは、欧米が一枚岩ではなく、特に欧州各国は天然ガスというエネルギーの根幹をロシアに依存するという兵糧攻めで音を上げるとの読みが働いていることと、NATOもアメリカも対ロ軍事作戦は取れないという確信が存在するからだと考えます。

意図してか否かは分かりませんが、欧米諸国が対中包囲網を固め、台湾海峡や南シナ海での作戦展開に重点をシフトする中、アメリカは確実にロシアに対して戦力を割くことはできませんし、欧州各国も軍事的な共通行動を取ることが出来ないことから、少しうがった見方をすれば、中国とロシアの連係プレーで、欧米各国の共通戦略展開を不可能にしていると言えます。

もしウクライナとの国境地帯に集結しているロシア軍が、越境してウクライナに侵攻することがあれば、欧米諸国はその覚悟の度合いを試されることになります。

すでにバイデン大統領は「経済措置の発動」を明言していますが、同時にアメリカによる軍事的介入はテーブルにないとも明言しており、“アメリカの抑止力”はロシアには働かないことを露呈しています。

そして先述の通り、NATOが即座に結束して対応する体制が整わないのであれば、当該地域における欧米諸国の信頼性は大きく傷つくことになります。

そうなったらどういう地政学バランスが登場することになるでしょうか?

可能性としては、冷戦時代のドミノ理論ではありませんが、中央アジア諸国(コーカサス・スタン系)は中ロサイドに倒れることになるでしょう。

この動きはすでに、アフガニスタンの今後をめぐる中央アジアと南アジアの連携でも生まれていますし、中ロが引っ張る上海機構の拡大においても表出してきている現象です。

ウクライナが消失することはないでしょうが、親欧米勢力は駆逐され、モスクワの友人の表現を借りれば、ロシアのbeautiful sisterとしての存在を取り戻すことになるでしょう。

次に考えられる可能性は、トルコの影響力の拡大です。スタン系の国は、実はトルコ系民族であり、先日、トルコ系の国々の連携を強める共同体が出来たことからも、地域におけるトルコの影響力は高まります。

ウクライナやベラルーシという、ロシアにとってのcritical interestsには手を出さないとは思いますが、先のナゴルノカラバフ紛争でのアゼルバイジャンの勝利を見ても分かるように、トルコは確実にこの地域に手を伸ばしてきています。

以前はEU入りを夢見て欧州各国に笑顔を振りまいてきましたが、その夢がかなうことがないと見切ったエルドアン大統領は、外交の矛先を中央アジアやアフリカに伸ばし始めました。

ドローン兵器(LAWS)の提供、経済的な支援、トルコ系の教育システムの提供など、様々なチャンネルを通して各国に働きかけると同時に、地域に根強く存在する反欧米の心理も使っています。そして、ロシアと中国と緊張感を保ちつつ、共に北アフリカから東アフリカ、中東地域(西アジア)を通って中央アジアへ向けた勢力圏を拡大しています。

東南アジアに至っては、まだアメリカと競っている最前線ですが、少し飛躍した言い方をすると、今回のウクライナをめぐる攻防に、もし欧米サイドが敗れるようなことがあれば、一気にアジア全域の地政学バランス・勢力図が変わってくる可能性が出てきます。

「何としても勢力・影響力の退潮を食い止めるために、ウクライナを防衛しなくてはならない」

これは実は欧米陣営にとっても、ロシアと中国の陣営にとっても、大事な戦いと位置付けられるのではないでしょうか。

そしてその影で、どちらにも足場があるトルコがどう動くかが、個人的には注目の対象です。

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