「年金の支給額が聞いていた見込額と違う」なぜそんな事態が起きてしまうのか

 

この制度になったのは平成19年4月からの改正からですが、それまでの制度は遺族厚生年金を貰うか、自分の老齢厚生年金を貰うかの完全な2択でした。

遺族年金90万円か、自分の老厚40万円どちらか好きなほうを選べと。

まあ、二つの年金が発生したんだから両方支給してよ!という声もありますが、そうすると社会保障の過剰給付になってしまいかねないんですよね。

過剰給付を避けるために昭和61年4月からは1人が貰う年金の種類は1つにしましょうねという大原則が出来ました。

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【参考】

でも、65歳以降に先あて支給とはいえ、老齢の年金と遺族年金の両方が受給できてるやん!と思われますよね。

遺族厚生年金は残された妻の老後保障の性質があるので、例外的に受給可能としています。昭和時代は「年金は夫が貰って、妻は無年金」という形が一般的だったので、夫死亡したらその無年金の妻に遺族年金を受給させて妻の老後は遺族年金で暮らしていってねという役割があった。

その名残で遺族厚生年金と老齢の年金の併給を例外的に認めている。

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もちろん遺族厚生年金90万円のほうが多いからそっちを取るに決まってるんですが(非課税だし)、自分の老齢厚生年金を諦める事になります。

せっかく、妻自身も厚生年金に加入して働いて保険料を納めてきたのに、それは切り捨てられてもらう事が出来ないわけです。

そこで平成19年4月の改正の時に、じゃあまずは先に自分の老齢厚生年金を貰った上で、その差額を遺族厚生年金として支給しようという事にして、今まで妻が働いた分が無駄にならないような形になりました(見た目は違うけど総額は同じなので、なんとなく朝三暮四のような感じではありますけどね…^^;)。

よって、遺族厚生年金を受給する予定の人は、自分の老齢厚生年金がいくらほど貰えるのかを考える必要があります。

なお、このような貰い方をするのは65歳以降の場合のみです。

65歳未満の間は遺族厚生年金が発生しても、自分の老齢の年金とどちらかの完全選択になります。

【追記】

妻は20年以上の厚生年金があり、その年金を62歳から貰います。夫に付いている配偶者加給年金は妻が65歳になるまで加算されるものですが、妻が62歳になると20年以上の記録がある厚生年金を貰えるようになるので妻62歳以降は原則として配偶者加給年金は全額停止する。

また、妻が昭和41年4月1日以前生まれの場合は配偶者加給年金から振り替えられた振替加算が受給できる場合がありますが、妻が20年以上の厚年があるので振替加算も受給できない。

それでは本日はこの辺で!

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