ドラゴン桜の指南役が警告、望まない中学受験が子供の一生を潰す

 

キャラを変える機会を失う中高一貫

最近は中高一貫校もブームになっているが、いい点ばかり強調されていて、そのリスクはまったく取り上げられていない。だが、中高一貫校にはある避けがたいリスクがあるのだ。

それは、中高一貫校の本質にかかわるリスクだが、なかなか大人には分かりにくい性質のものだ。というのも、統計的な数字になって表れることもないし、目に見える形で表に出てこない性質のものだからだ。

具体例を一つ挙げる。

わたしの知っているある子は、小学校のときとてもおとなしく消極的で、名前を呼ばれても返事ができないほどだった。先生に名前を呼ばれると固まってしまってしばらく動かなくなるので、先生はうっかり名前も呼べないというほどだった。

その子は、小中学校でずっとそういう状況だったが、高校で大変身し、積極的になって、3年生の時に生徒会長になったというのである。

話を聞くと、その子は、小学校・中学校時代、ずっと自分で「キャラ(性格)を変えたい」と思っていたが、周囲は同じ友だちが多く、周りの目が気になって変えることができなかったという。

ところが高校に入ると、顔見知りの友だちはほとんどおらず、一念発起して性格を変えたのだという。その子は、「同じ中学からその高校に進学した子が2人しかいなかったおかげで、周りの目を気にしないで新しいキャラに生まれ変われた」と言っていた。

中高という思春期の6年間は大人の6年間に比べて、2倍も3倍も価値があり、さまざまな可能性を秘めているのだ。

人は簡単に人にレッテルを張り、イメージをつくってしまうものだ。中高一貫校だと、中学1年生の1学期に決まったイメージやキャラがそのまま6年間続く恐れがある。その子がいくら新しい自分になりたいと思っても、周りの期待するイメージを打ち破ることは難しい。

6年間メンバーが替わらないということは、6年間同じ人間関係が続くということだ。それは、一度出来た力関係や上下関係も変わらないということなのだ。

もし、弱いキャラ、いじめられるキャラに決めつけられたら、それがそのまま固定化されて6年間続くという可能性が強い。いじめの構造が6年間続くということだ。

しかも、この時期のいじめは、小学生のそれとは比べものにならないくらい巧妙だ。親や教師が目を皿のようにして見ていても見抜けない部分は絶対にある。

いじめられている子自身も、そのことを親や教師に知られたくないと考えることが多い。だから、中高一貫校では、誰にも知られないところで6年間いじめられ続ける子が出てくる可能性が非常に高い。

中高一貫校に進む子が必ずそうなると言っているのではない。そうしたリスクがあることを親も塾の教師も分かっていてほしいと思う。

初出「親力養成講座」日経BP  2008年6月27日

image by: Shutterstock.com

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5年連続でメルマガ大賞の「教育・研究」部門賞を受賞!家庭教育メルマガの最高峰。教師生活23年の現場経験を生かし、効果抜群の勉強法、子育て、しつけ、家庭教育について具体的に提案。効果のある楽勉グッズもたくさん紹介。「『親力』で決まる!」(宝島社)シリーズは30万部のベストセラー。

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【著者】 親野智可等 【発行周期】 不定期

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