3.コピーファッションは裁かれない?
そもそも一言でコピーというが、その中身は一つではない。最も分かりやすいのが、ブランドを含めて、そっくりコピーする偽物商法だ。これは明らかに犯罪行為であり、だれもが悪いことだと知っている。
それでは、商品のデザインのコピーとはどの範囲をいうのか。服を構成する要素の内、一部だけをコピーする場合、それはコピーなのか。
例えば、同じ型紙で素材違いの服はコピーと言えるのか。素材が違えば、全く服の印象は変ってしまうので、コピーだと気がつく人もいないだろう。
それでは色違いはどうだろう。黒や紺などのダークな色だけで展開している服のデザインをコピーして赤や黄色という派手な色で販売するのはコピーなのか。
ディティールはどこまでをコピーというのか。テーラードジャケットをコピーして、ポケットだけを変えるのはコピーなのか。あるいは、素材もデザインも同じだけど、目立つワッペンを付けたらそれはコピーというのか。
更に根本的な問題として、民族衣裳を着用していた国が洋服を導入した場合、洋服は全て欧州のコピーとも言える。
多くの場合、ブランド名、ブランドのシンボル、ブランドロゴ等をコピーしたら明らかに犯罪である。しかし、デザインのコピーについては、ほとんど訴訟にばならない。なぜなら、デザインをコピーしても、それを立証するのが大変だし、裁判費用の法が高くつくからだ。コピー商品で、大儲けした企業ならば、弁護士を張り切るだろうが、ファッションの流行は速いし、訴えて裁判になる頃には、既に会社が倒産しているかもしれないからだ。
4.デジタル時代のコピー問題
アナログ時代は、デザインをコピーするのも大変だった。サンプルを購入し、そこからデザインを抜き取る。それだけでも結構な作業だ。しかも、コピーしても売れるかは分からない。コピー商法は長続きしないし、リスクの割には儲からない。
デジタル時代になって状況が変化した。そもそもデザイン作業がデスクトップで行われるようになり、コピペが簡単にできるようになった。
特に、イラストやグラフィックデザインの分野では、著作権フリーの素材を加工してデザインするのが一般的である。元になる素材が著作権フリーなら問題はないが、ネットで図案を見つけて、それが著作権がある場合だと著作権侵害につながる。
それでも、多くの場合は、泣き寝入りする人が多いと思うので、問題が表面化することはない。仮にクレームが入ったとしても、丁重にお詫びし、誠意を持って対応すれば示談で解決できるはずだ。
問題がこじれるのは、コピーが指摘されても逃げてしまうか、開き直って罪を認めない場合である。
デジタルは簡単にコピーできる。そして、一つのデザインを決めるのに、何種類もの提案を求められる事案も増えている。特に、コピーする必要もない簡単な仕事ほどバレないと思って、罪の意識もなくコピーしてしまうことが多いようだ。
アナログの時代には、デザイン提案は膨大な作業を伴うためにコストも掛かるので、「発注」も「提案」も「決定」も慎重だった。しかし、デジタルになって、簡単にコピーできるようになり、全てが軽くなってしまった。その結果、軽いコピー犯罪が増えているのだろう。
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