ウクライナ戦争における“真の勝者”が「中国」だと断言できる3つの理由

 

一つ目は、北京オリンピック中の開戦回避という困難な外交カードを見事にロシアに飲ませることができたことに尽きる。これによって中国は、北京オリンピックは平和の祭典として無事終了したと喧伝することができた(パラリンピックを無視しているという意見はそもそもかき消されている)。オリンピック休戦は、中国の外交的な勝利となっただけではない。あの強権的なプーチン大統領ですら、習近平国家主席のお願いは聞くのだということを世界中に見せつけることに成功したのだ。他国の開戦日をコントロールできるというのは、戦争以上に世界史的に大きな事件だ。中国の存在と影響力はついにここまできたのだ。

二つ目は、デジタル人民元への移行の事実上の承認となったことだ。昨年より国内10か所のテスト地域で推し進めてきた中国のデジタル人民元は、北京オリンピックの開幕に合わせて世界中にローンチ・アピールしたのは記憶に新しい。だが、実際は、アフリカ、中央アジア、中南米などの一部の国・地域での積極的な導入にとどまり、全世界的なトレンドにはならないとみられていた。ところが、ウクライナ戦争によって大きな波となることが確定した。開戦によってロシアが国際金融決済の仕組みから排除される可能性を予測した中国は、各国からの措置を想定してデジタル人民元への誘導、というか迂回案をロシアに提示していた。実際に、米国・EU(日本も)などが足並みを揃えてSWIFTからのロシアの排除を決めたが、これこそこそ中国の狙い通りであったのだ。ルーブルが凍結される中、デジタル人民元という新しい通貨、その強力な武器でもって、中国はロシアを救う形になるのだ。

三つめは、戦争当事者でも交戦関係国でもない中国は、ロシアにとってもウクライナにとっても、最大の貿易国であると点だ。まずは、ウクライナ。ウクライナにしてみれば、中国はトウモロコシを代表とする農産物の世界最大の輸出先であるし、鉄道や港湾インフラ、さらには、中国初の空母「遼寧」がウクライナ製であるように軍事的にも強いつながりをもっている。ロシアにとっても中国が大切なお客様であるのは同様だ。中国は資源・エネルギーなどで最大の貿易相手であるだけではなく、今回の戦争によって制裁が予定されているEUなどの「代替取引先」ともなる。中国とロシアは、年間約17兆円の貿易額に加えて、天然ガスと原油の11兆円規模の新契約も締結した。経済制裁にとって苦しいはずのロシアだが、中国さえいれば「モーマンタイ」なのである。こうした等距離外交によって、中国は最良のポジションを得たということになる。

外交巧者の中国が覇権をうかがう日はもうまもなくだ。

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