文在寅の牢獄送りは決定か。韓国大統領選、宿敵当選で訪れる絶望

 

文在寅政府と対立していた尹次期大統領は、自然に野党代表に担ぎ挙げられた。次期大統領選候補世論調査で、与野党合わせて支持率1位を走り始めることになる。全国選挙で4回相次いで敗北し、政権プランすらなかった保守陣営は、尹次期大統領を代案としてラブコールを飛ばした。3か月余り家に蟄居しながら基礎体力を鍛えた尹候補は「6.29宣言」を通じて大統領選への挑戦を公表した。公正と常識という時代精神を土台に圧倒的な政権交代を実現するという尹錫悦のコンセプトは、進歩を標榜した政権主流政治勢力の「不公正」と「ネーロナンブル」に疲れた国民にカタルシスを与えた。周辺では、尹次期大統領の父親が忠清南道公州(チュンチョンナムド・コンジュ)出身で、近くの論山(ノンサン)に坡平・尹氏の集成村があるという点を機に、「忠清大望論」を吹き込んだりもした。忠清道を遊説するときにはいつも「忠清のアドゥル(息子)、ユン・ソンヨル」と言っていた。

汝矣島(ヨイド)文法(=日本で言えば永田町スタイルほどの意)に慣れていなかっただけに、初期の適応過程は順調ではなかった。「ユン・ソンヨルXファイル」論議で道徳性リスクが浮上し、果敢だが下手な話法で何度も非難を浴びた。昨年7月末、電撃的に「国民の力」に入党してからも、李ジュンソク代表との不和説が取りざたされるなど右往左往した。「全斗煥擁護」論発言や「犬の謝罪」SNS書き込みは致命的な失策とされる。ただ、党内選挙の過程で、柳承敏議員、元喜龍(ウォン・ヒリョン)元済州道知事らライバルから波状攻勢を受けながらも、堅固な支持率を維持する底力を誇示した。政権の中核に立ち向かい、屈しなかったというイメージのおかげで、党員から全面的な支持を得ることになる。

大統領選本選に飛び込んだ尹氏は、何度も試験台に上がり、政治家に成長した。李ジュンソク代表との葛藤解消は第一関門だった。昨年11月、李代表が「尹核官」(尹次期大統領の主要関係者を略した言葉)を狙撃して地方を回ると、蔚山まで訪れ、深夜の直談判で事態を収拾した。今年1月、議員たちが李代表に対する辞退要求決議案を通過させようとした時も、太っ腹に議員総長を訪れ、李代表と手を取り合って「ワンチーム」を宣言した。「三顧の礼」で迎え入れた金鍾仁(キム・ジョンイン)元総括選挙対策委員長が自分に「演技だけしろ」と「毒舌」すると、選対を解散する勝負に出るという賭けに出たりもした。

選挙対策本部を実務型に縮小した尹次期大統領は、全羅道(チョンラド)と「2030世代」に積極的に取り組み、支持率アップの契機を作り出した。女性家族部の廃止など、特定支持層を狙った公約も次々と打ち出している。テレビ討論では、民主党の李在明候補の「大庄洞ゲート」関与疑惑を取り上げ、検事が被疑者を取り調べるような場面を演出する戦略を展開した。事前投票の前日、尹氏は、「国民の党」安哲秀代表との劇的な一本化で政治力を立証した。安代表の決裂通知に対し、これまでの交渉内容を公開する「駆け引き」を繰り広げ、完走を公言していた安代表から自ら辞退と支持宣言を引き出したのだ。

過半数の政権交代世論を追い風に、新政府の舵取りに成功した尹次期大統領は、「与小野大」の不利な院内地形を克服し、具体的な成果を出さなければならない難しい課題を抱えることになった。政治報復の悪循環の輪を断ち切って、国民統合と民生回復の夢をかなえることができるか注目されるところだ。対日関係においても、無条件に日本が嫌い、といったスタンスは見せないものとみられる。米韓安保を土台に日本とも有効な関係を築いていくことになるだろう。仲の悪い二人(李ジュンソク代表と新しく合流した安哲秀)をいかにうまく政府の駒として動かしていくかなど、前途多難ではあるけれど、法と常識に基づいたマインドをこれまでのように貫いていくなら、韓国という国は安定と輝きを放つ東アジアの要衝の地となっていくであろう。李に期待するところは大きい。

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韓国暮らし4分1世紀オーバー。そんな筆者のエッセイ+韓国語講座。折々のエッセイに加えて、韓国語の勉強もやってます。韓国語の勉強のほうは、面白い漢字語とか独特な韓国語などをモチーフにやさしく解説しております。発酵食品「キムチ」にあやかりキムチパワーと名づけました。熟成した文章をお届けしたいと考えております。

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【著者】 キムチパワー 【発行周期】 ほぼ 月刊

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